【1日5分】あらすじ三国志61「曹操、洛陽に急行する」|大泉洋主演『新解釈・三國志』応援企画!

アイキャッチ画像 三国志

 

【1日5分】あらすじ三国志「一覧」はこちらから!

三国志
大学で中国文学を学び、長年国語の教員を勤めてきた経験を活かして、分かりやすく、簡潔に、それでいて深イイ三国志のあらすじ紹介を行っていきたいと思います! 『三国志』に興味はあるけど小説を読んだりドラマを見たりする時間はない、でも簡単なあらすじだけではもの足りない・・・。 そんな方にはぴったりです!

 

スポンサーリンク

曹操、洛陽に急行する

献帝けんていは、夢にまで見た洛陽らくよう(=河南かなん省西部。司隷しれい司州ししゅう)東部。長安に遷都する前の都。記事下の地図参照。)の地にお入りになった。

 

董卓とうたくに連行され、いち早く洛陽を退去して長安にお入りになった献帝は、炎上する洛陽の姿をご覧になってはいない。

 

初めてご覧になる無残な洛陽の有り様に、献帝はしばし時を忘れて呆然ぼうぜんとするのだった。

 

呂布りょふによって祖廟そびょうあばかれたことは献帝のお耳にも入ってはいたが、かつて幾度となく訪れたその場所さえ特定できないほど、瓦礫がれきが散乱し、その隙間からは草木が生い茂っていた。

 

しかし、献帝のお心はどこか晴々としていた。

 

なるほど、洛陽はかつての繁栄が嘘であるかのように廃墟はいきょと化してはいるが、それでも玉座から見下ろす風景にはちんを縛るものが何一つない。

 

挿入画像

高希希監督『Three Kingdoms』の献帝

 

宮人みやびとの「万歳」の声が鳴り止まない。

 

献帝はこの時、自らの手で大漢を再興する目算を密かにお立てになっていたに違いない。

 

その頃、賈詡かくの進言によって発せられた李傕りかく郭汜かくし討伐のみことのりほうじた勅使ちょくしは、各地の諸侯のもとに到着し、その返答を待っていた。

 

また、天子てんし(=皇帝。)が長安を脱し、洛陽方面に向かって逃避行を繰り広げているということも、各地の諸侯はつかんでいるはずであった。

 

冀州きしゅう(=現在の河北かほく省を中心とする地域。)を統治している袁紹えんしょうのもとでは、献帝を受け入れるかいなかで賛否両論が巻き起こっていた。

 

挿入画像

高希希監督『Three Kingdoms』の袁紹

 

参謀の田豊でんほうは、断固として受け入れ反対を表明した。

 

ご主君、天子を擁した者の末路をご存じでしょう。

董卓は滅び、李傕・郭汜は玉体ぎょくたい(=皇帝のお体。)を巡って消耗戦を繰り返した挙げ句、今や賊軍となって悲惨な末路を辿たどっております。

逃避行を重ね、皇宮さえ持たない天子に何の旨味うまみがございましょうか?

火種ひだねとなるだけでございます。

それよりも、今は幽州ゆうしゅう公孫瓚こうそんさんを討伐し、版図はんとを広げることこそが肝要です。

収穫が済み次第、征伐すべきです。

 

田豊が言い終わると、同じく参謀の許攸きょゆうが進み出て袁紹に拝礼し、「我が君、この機を逃してはなりません」と、自論を展開し始めた。

 

献帝を擁するは天下を味方につけることと同じです。

漢に忠義の心をいだく諸侯はいまだに少なくはありません、だからこそ反董卓連合には十八もの諸侯が参じたのです。

この時、献帝は力を持っていたでしょうか?

無力であるにもかかわらず、あれだけの諸侯が集ったのです。

 

挿入画像

高希希監督『Three Kingdoms』の許攸(右)と田豊(左)

 

許攸は田豊をちらと見て、その弁舌を続行した。

 

田豊殿は目に見える旨味ばかりに注目しておりますが、天子はいるだけで価値があるのです。

漢の天子の詔を巧みに利用すれば、兵を出さずして諸侯を操ることができます。

また、万が一、詔に応じなければ、その諸侯は逆賊となります。

その際は、漢の名のもとに他の諸侯と連合して攻めればよいのです。

版図はおのずと広がりましょう。

この、目に見えぬ旨味を堪能しない手はございません。

どうか、どうかご英断を!

 

袁紹は腕組みをし、まだ決めかねている様子だった。

 

そこで、許攸は奥の手を使った。

 

我が君、いま我が君が動かなければ、他の者が天子を奪いますぞ!

 

すかさず、「他の者とは誰だ?」と袁紹は尋ねたが、袁紹にはある人物の顔が脳裡のうりをよぎっていた。

 

許攸は袁紹の目を見ながら、右手を天に突き上げて答えた。

 

兗州えんしゅう曹操そうそうです。

 

袁紹は曹操の一歳ひとつ上で、かつては悪童あくどうとしてよく交わりを持っていた。

 

大胆不敵だいたんふてき深謀遠慮しんぼうえんりょ果断かだんに富んだ曹操を、袁紹は少年時代から密かにライバル視していた。

 

袁紹や曹操とよくつるんでいた許攸は、そこを突いたのである。

 

袁紹は目を閉じ、しばらく沈黙してから立ち上がり、許攸に命じた。

 

そなたの言う通りである。

今すぐ顔良がんりょう文醜ぶんしゅう(=いずれも袁紹の猛将。)を従え、5万の騎兵と共に洛陽を目指せ!

 

許攸は「ははっ」と言って顔良・文醜と共に殿上てんじょうを退くと、二将軍に命じた。

 

時は急を要する。

顔良殿は精兵500を従え、私と共に洛陽に急行する。

文醜殿は残りの兵と共に、できるだけ早く洛陽に向かうのだ。

 

しくも許攸とは竹馬ちくばの友であった曹操も、天子を抱える旨味は存分に分かっていた。

 

そのため、曹操は昼夜を分かたず、洛陽を目指して駒を進めていた。

 

曹操は、天子を擁することが、どれだけ自分の覇業に利することかを分かっていたのである。

 

先に玉体を手にするのは袁紹か、それとも曹操か。

 

このように、玉体の争奪戦は水面下で、激しく火花を散らしていたのであった。

 

『三国志』の感動を動画で味わうなら映画『レッドクリフ』!
映画『レッドクリフ』は、「中国映画史上、過去最高額の投資」と言われ、トニー・レオンや金城武などの名優をキャストに迎え、その壮大な戦闘シーンは『三国志』の映像作品の中では群を抜いています。この記事では、『三国志』の魅力に触れるには最も欠かすことが出来ない『レッドクリフ』の魅力を解説します。

 

スポンサーリンク

李傕・郭汜、再び出陣する

「陛下!陛下!」と、洛陽に急報が舞い込んできた。

 

陛下、李傕・郭汜の軍勢が長安から出陣したとのことです。

今ごろは、すでに弘農こうのう(=河南かなん省西部。司隷しれい司州ししゅう)東部。洛陽の西隣に位置する。)の辺りにまで進軍しているものと思われます。

 

献帝の龍顔りゅうがんからは生気が失われた。

 

そして、侍従らのおもて蒼白そうはくとなった。

 

ここは、洛陽城の守りを固め、城を枕にしてじに覚悟で戦いましょう!

 

楊奉ようほう抜刀ばっとうするなり進言した。

 

しかし、すぐさま董承とうしょうが反論した。

 

李傕らの軍は10万をくだりますまい。

対する我らは、腹を空かせた1000の兵士がいるばかり。

これでは、とても太刀打たちうちできません。

また、長安からの出兵であれば、兵糧や武具は潤沢じゅんたくに取り揃えてありましょう。

短期戦でも不利、長期戦でも不利。

頴川えいせん(=現在の河南かなん省中部。豫州よしゅう西部。)の曹操を頼ってみてはいかがでしょうか。

曹操の兵力は今や30万とも40万とも言われております。

その昔、逆賊董卓を暗殺しようとして失敗し、陳留ちんりゅうで再起を図って反董卓連合に加わり、参謀まで務めた男にございます。

漢に報いる心持ちは多分に持ち合わせておりましょう。

頴川であれば、ここからさほど遠い距離ではございません。

陛下、どうか曹操のもとへ!

 

命あっての物種ものだねである。

 

「命があれば捲土重来けんどちょうらい、再びこの洛陽の地を踏み締めることも叶いましょう」と念押しした董承の意見を、献帝はお聞き入れになった。

 

すると、外からまた知らせが舞い込んできた。

 

東から、何者かの軍勢が土煙つちけむりを上げて迫ってきます。

 

献帝は即座にお尋ねになった。

 

それは何者ぞ?

 

西方からは李傕・郭汜が。

 

東方からは得体の知れない軍勢が。

 

献帝は再び、絶体絶命の危機にひんしたのであった。

 

挿入画像

西暦 出来事 年齢
劉備 孔明 曹操 孫策 袁紹 董卓 呂布
前202 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。
前157 景帝が漢の皇帝に即位する。
168 霊帝が漢の皇帝に即位する。 7 13 14 30 7
181 何氏が霊帝の皇后となる。 20 26 6 27 43 20
184 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 23 3 29 9 30 46 23
189.5 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
189.9 少帝が廃位され、献帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
190.1 反董卓連合軍が結成される。 29 9 35 15 36 52 29
190.2 董卓、都を長安に遷す。 29 9 35 15 36 52 29
192 董卓、暗殺される。 31 11 37 17 38 54 31
193 曹操、徐州に侵攻する。 32 12 38 18 39    32
194 劉備、徐州を領する。 33 13 39 19 40   33
196.7 献帝、洛陽に帰還する。 35 15 41 21 42   35

 

以上のあらすじは、主に吉川英治よしかわえいじ『三国志』、陳舜臣ちんしゅんしん『秘本三国志』『小説十八史略』、横山光輝よこやまみつてる『三国志』、王扶林監督『三国志演義』、高希希監督『Three Kingdoms』などをベースにしています。そのため、羅貫中らかんちゅうの『三国志演義』や陳寿ちんじゅの『正史三国志』とは内容が異なり、少なからず脚色が含まれることがあります。あらかじめ、ご了承下さい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました