【1日5分】あらすじ三国志「一覧」はこちらから!

徐晃、李楽を討つ
太僕(=車馬を管轄する官吏。)韓融の説得によって、李傕・郭汜は兵を退いた。
しかし、その実、万余を超える兵馬に賄うだけの兵糧が尽きての撤退であった。
二年前の蝗害(=蝗による被害。)に端を発する大飢饉によって、中国北部は深刻な食糧難に襲われていた。
七月(=旧暦の7月。今の暦では秋に当たる。)、収穫の季節になった。
しかし、頭を垂れない稲穂が田畑に立ち並ぶ様子を見て、百姓はみな悲嘆に暮れるだけであった。
仮御所を置いた安邑(=現在の山西省南部。司隷(司州)東部。洛陽のすぐ西に位置する。記事下の地図参照。)でも食糧事情は厳しかった。
木の実や野草を煮て食った。
それさえ枯れてくれば、草の根や虫を食べなければならない。
それを思うと、侍従たちは献帝に対して心苦しくなるのだった。
しばらくすると、長安には南部からの年貢が送られてくる。
そうなれば、再び活気付いた李傕らの襲来にも備えなければならない。
安邑の宮人や将兵は、今後のことを思うと暗澹たる気持ちになるばかりだった。
休戦しているこの隙に洛陽(=河南省西部。司隷(司州)東部。長安に遷都する前の都。)に帰り、頴川(=現在の河南省中部。豫州西部。)の曹操や冀州(=現在の河北省を中心とする地域。)の袁紹、南陽(=現在の河南省南陽市。荊州北部。)の袁術ら諸侯の助けを待つことこそ、最上の策であるように思われた。
しかし、李楽にはこの道理が分からない。
安邑にいれば、最大勢力の自分がものを言う権利がある。
餓死するより、その権利を手放すのが嫌なのである。
楊奉や董承、楊彪は密議を繰り返した。
そしてある夜、李楽が近隣の村まで酒と女を探しに行っている間に、献帝一行は安邑を抜け出し、一路洛陽を目指したのであった。
天子(=皇帝。)をお乗せした御車を伴っての行軍は遅々として進まない。
安邑と洛陽までは馬で丸一日、徒歩では三日かかる。
いずれ、どこかで李楽の軍に背後を襲われる可能性が高い。
楊奉は徐晃に殿の任を与え、肩をぽんと叩いて言うのだった。
日頃の目に余る李楽の態度には、お前も腹を据えかねておろう。
今日はその堪忍袋の緒を切って良いぞ。
そして、李楽を討伐する算段について、楊奉は徐晃に耳打ちをするのだった。
高希希監督『Three Kingdoms』の徐晃
徐晃は後軍に退き、洛陽に向けて進軍しながらも李楽軍の到着を今か今かと待ち構えていた。
案の定、二日目の夜、二更(=亥の刻。夜の10時ごろ。)を過ぎた頃、李楽は現れた。
徐晃はこの時を待っていた。
ここから先は王の道である!
獣の通れる道ではない!
徐晃は李楽を挑発し、その行手を塞いだ。
なに?
獣だと!
この青二才めが!
徐晃の力を目の当たりにしたことのない李楽は油断していた。
槍を振り回し、猪突猛進、徐晃に向かって来たのである。
二十合、三十合と激しくぶつかり、擦れ合う鋼の音が夜の静寂を劈いた。
徐晃は余裕の手捌きと表情で李楽の槍を交わすので、李楽は面白くない。
俄然、躍起になって槍を繰り出してくる。
それが五十合に達した頃、李楽の背後に待機している白波軍の左右から、突然徐晃の兵が迫って来た。
徐晃が軽々と大斧を振り下ろすと、李楽の首は一刀のもとに吹き飛んでしまった。
李楽を失った兵士たちは徐晃の勇猛に恐れ慄き、またすでに四方を包囲されているために逃亡することもできない。
これによって、徐晃は無傷で白波軍の兵士を旗下に取り込むことができたのであった。

献帝、洛陽に帰る
全ては楊奉の計画通りであった。
陛下、徐晃が李楽を討ち取りましてございます!
楊奉はすぐさまその戦果を献帝にお伝えしたが、労いのお言葉をおかけになったものの、その龍顔に笑みはなかった。
始終、命の危険と隣り合わせの逃避行であった。
禍福は糾える縄の如し。
(=災いや幸福というものは、撚り合わせた(何本かの紐を捻り合わせて一本にする)縄のように、交互にやってくること。)
救われては絶体絶命の危機に陥る、その繰り返しであった。
「李楽死す」の報を聞いても、献帝が心からお喜びになれないのも無理はなかった。
献帝も皇后も、付き従う侍従も将兵もみな憔悴し切っていた。
しかし、安邑の仮御所を出立してから四日目の正午。
建安元(196)年7月、献帝は5年の時を経て、ようやく洛陽に帰還したのであった。
高希希監督『Three Kingdoms』の荒廃した洛陽
董卓によって焼失した旧都は、反董卓連合軍による復旧工事が行われたものの、半ばにして諸侯が次々と自国に撤退したために、見るも無惨な状態となっていた。
献帝は荒廃を極めた洛陽の姿に愕然となさったが、かつてお住みになっていた皇宮が近づくと、さすがに胸が弾んでおられるご様子であった。
そして、5年ぶりに玉座におつきになった時、万感の思いが込み上げて来て、何度もお袖で涙を拭われるのであった。
万歳、万歳、万々歳!
宮人の口からは自然に、「万歳」の言葉が溢れ出た。
ここまで献帝を中心的に支えて来た楊奉、董承、楊彪の三者も感極まり、互いに健闘を称え合いながら落涙し、いつまでも肩を抱き合うのであった。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
192 | 董卓、暗殺される。 | 31 | 11 | 37 | 17 | 38 | 54 | 31 |
193 | 曹操、徐州に侵攻する。 | 32 | 12 | 38 | 18 | 39 | 32 | |
194 | 劉備、徐州を領する。 | 33 | 13 | 39 | 19 | 40 | 33 | |
196.7 | 献帝、洛陽に帰還する。 | 35 | 15 | 41 | 21 | 42 | 35 |
コメント