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李傕陣営、崩壊
賈詡の献策通り、献帝は李傕を大司馬(=軍事を与る長官。相国、太傅に次ぐ高官。)に任じる詔を発し、併せて李傕に恩賞を下賜した。
賈詡の読み通り、李傕はその恩賞の多くを巫女たちに分け与えた。
日々、郭汜の軍勢と命懸けの交戦を繰り広げる将兵に褒美が与えられることもなく、逆に、思うように郭汜軍を粉砕できないことに対する理不尽な叱責ばかりが下るのであった。
それ故、謀反が起こるのにそう時間はかからなかった。
李傕に対する憤りを募らせ、このままでは共倒れになると判断した軍官の宋果は、騎都尉の楊奉と共に李傕暗殺を計画した。
宋果が李傕陣営を内部から撹乱した後に、楊奉の率いる部隊が外から突入する流れとなっていたが、事前に事が露見し、宋果は首を刎ねられてしまった。
楊奉は李傕の軍勢と激しく交戦したが、散々に打ちのめされた挙句、どこぞへと落ちて行ったのであった。
楊奉率いる反乱軍を鎮圧して都に凱旋した李傕の面に、喜びの表情は全くなかった。
なぜなら、その日討伐したのは、もともと自分の主力部隊の一つだったからである。
こうして、李傕の軍はさらにその力をもがれたのであった。

献帝、長安を脱する
時に、李傕や郭汜とともに「董卓四将軍」と呼ばれ、いまは弘農(=旧都洛陽の西に位置する。記事下の地図参照。)を治めていた張済が軍を引き連れて長安に上洛した。
このまま、李傕と郭汜の同士争いが激化すれば、いずれかの諸侯が軍事介入し、自分にも害が及ぶと考えたためであった。
李傕と郭汜の軍は日々勃発する小競り合いによる消耗戦で疲弊し、もはや張済の軍には歯が立たない。
張済の求めに応じて和睦する他に、両者に選択肢はなかったのである。
長期化した李郭の対立も、ここに一応の和解が成立したのであった。
激しい戦禍のために、長安は機能不全に陥り、当面の間、天子(=皇帝。)を弘農へお連れするという張済の提言が採択された。
弘農は、旧都洛陽とは目と鼻の先であったから、常々望郷の念を抱かれていた献帝のお喜び様は尋常ではなかった。
しかし、その旅路は想像を絶するほど、受難に満ちたものとなった。
まず、土壇場になって郭汜が弘農行きに異を唱えた。
そこで、李傕と張済は秘密裡に献帝を連れ出し、月下、弘農を目指した。
またしても李傕に玉体(=天子のお体。)を奪われた郭汜は激怒し、李傕・張済一行を猛追して華陰県(=現在の陝西省華陰市。長安の東に位置する。)の辺りで総攻撃を仕掛けた。
李傕が力なく呟く。
長安で権勢を誇っていた頃の面影はない。
張済は動揺する兵卒を落ち着かせ、「我に続け!」と郭汜軍に突進して行く。
献帝は御車の中でひたすら恐れ慄き、皇后は献帝の膝にすがりついて落涙するばかりだった。
侍従たちは御車の車輪の影に身を潜めたまま、わなわなと震えている。
弘農への出立に際して、天子より安集将軍に任じられていた董承(=献帝の祖母董太后の親族の甥と言われる。)は抜刀し、御林軍(=天子を警護するための軍隊。)を指揮して御車の防御を固めた。
長安を脱しても、尚繰り広げられる玉体の争奪戦に、献帝は涙をお流しになり、「朕はなぜ天子として生まれてしまったのか?」とお嘆きになるのだった。
郭汜と張済の軍が玉体を巡って干戈を交えた刹那、北西の山林から銅鑼の音が響いた。
予期していない軍勢の出没に、両軍は慌てに慌てた。
味方の援軍か、それとも敵の援軍か?
そう思案しているうちにも、無数の軍馬が土煙を巻き起こして迫ってくる。
みな目を凝らして、その部隊に翻っている幟に縫われた文字を眺める。
大漢楊奉 |
楊奉だ!
楊奉の軍だ!
それは、味方の援軍でも敵の援軍でもなく、両軍にとって新手の敵だったのである。
楊奉とは、もともと騎都尉として李傕に付き従っていた臣下であった。
しかし、李傕に反旗を翻すも強かに敗れ、その後は行方知れずとなっていた。
楊奉の部隊は勢いそのままに、張済と郭汜の部隊を無差別に攻撃して行く。
その中に、大斧を振り回してばったばったと敵兵をなぎ倒して行く武士の姿があった。
楊奉の部隊は1000人ほどの小隊であったが、その大斧を自在に操る偉丈夫を先駆けにして、まるで鉄棒を折り曲げるかのようにして敵軍の群れに分け入って行った。
まず李傕が逃げた。
それを見た張済が全軍に撤退の号令をかけ、李傕の後を追った。
それに呼応するかのように、郭汜が兵を退いた。
楊奉は、見事、三将軍を同時に退ける大戦功を挙げたのであった。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
192 | 董卓、暗殺される。 | 31 | 11 | 37 | 17 | 38 | 54 | 31 |
193 | 曹操、徐州に侵攻する。 | 32 | 12 | 38 | 18 | 39 | 32 | |
194 | 劉備、徐州を領する。 | 33 | 13 | 39 | 19 | 40 | 33 |
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