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呂布、兗州を失う
兗州(記事下の地図参照。)奪還を狙う曹操軍を迎撃した呂布であったが、許褚や悪来(=典韋。)、夏侯惇ら勇将が次々に自分に向かって来たので、さすがの呂布も濮陽城に撤退した。
しかし、呂布が城に引き返してみると、全ての城門は閉ざされ、のみならず掘りに架けられていた吊り橋も上げられてしまっていた。
呂布の全軍は、図らずも城下で立ち往生するしかなかった。
馬鹿者ども、戦況を見て分からぬか。
早く吊り橋を下ろせ!
開門せよ!
高希希監督『Three Kingdoms』の呂布と赤兎馬
呂布が怒号を飛ばすと、城郭から一人の小柄な男が顔を出した。
それは、田氏であった。
田氏とは濮陽の市中で屈指の豪商で、以前呂布に協力して曹操を濮陽城に誘き寄せ、曹操軍を壊滅の一歩手前まで追い込んだ人物であった。
やあ、これは呂布殿でしたか。
お早いお戻りで。
残念ですが、田氏はこれから曹操殿にお味方することに致した。
利益の多い方に付くのが、我ら商人の道でございます。
ささ、日の暮れぬうちに、どこぞでも落ちて行かれよ。
刹那、「曹」の幟が城郭のあちらこちらに掲げられ、その間には弓の弦を目一杯に引いた弩弓手隊が一斉に顔を出した。
歯がみしても罵っても、城が返るわけではない。
ここにいれば、いつ曹操軍に包囲されるか分からない。
陳宮は、怒れる呂布を説得して撤退を決意させると、自らは濮陽城の東門から田氏に掛け合い、城内から呂布の親類を譲り受けるのだった。
根城を失ってしまった呂布に見切りをつけ、一人、また一人と兵士が逃亡して行った。
呂布は陳宮に、袁紹や袁術など3、4人の目ぼしい諸侯の名前を並べたが、陳宮の首が縦に振られることはなかった。
親子の契りを交わしていた丁原や董卓を殺害し、曹操が拠点としていた兗州の留守を狙って強奪したことなどは、すでに天下に知れ渡っていることであった。
不義の人であると評判になってしまった呂布を、諸手を挙げて迎え入れる諸侯がいるとは、陳宮には到底思われなかったのである。
実際、冀州の袁紹に使いを出してはみたが、かえって袁紹は顔良に5万の兵を与えて州境を守らせ、曹操に与した(=味方した。)のであった。
劉備はどうか?
突然、陳宮の口から意外な人物の名が提示された。
劉備は先頃、陶謙から徐州を譲り受けました。
曹操が徐州に侵攻した折は、何の縁もゆかりもない陶謙を少数の兵で必死に援護したとか。
人徳の士と評判のお方ですから、万が一にも我らを受け入れてくれることもあるかと。
呂布には、もとよりそれ以上の考えはない。
すぐに劉備のもとに使者を送り、当面の間城下に駐屯させてほしいという要望を伝えた。
呂布の一行は南下し、とぼとぼと徐州を目指したのであった。
高希希監督『Three Kingdoms』の、左から陳宮と呂布

劉備、呂布を迎え入れる
呂布を受け入れることは、百害あって一利なし。
徐州では、家臣の誰もが呂布受け入れに反対する意見を劉備に投げかけた。
桁外れに義に厚いお方だということが主君劉玄徳(=「玄徳」は劉備の字。)の魅力でもあり、同時に心配の種でもあったからだ。
殊に、猛烈に反対したのが張飛だった。
奴は三つの家の奴隷。
丁原、董卓、王允と、奴が仕えた主人はみな無残な最後を遂げたではないか。
兄者、絶対にだめだ。
呂布を迎え入れてはだめだ。
「兄上、わしも張飛の意見に賛成です」と、髭をしごきながら関羽も同調した。
富国強兵に邁進している時に、何故呂布などを招き入れる必要がありましょうか?
呂布は狼。
今や餓狼です。
必ずやこの徐州を掠め取りましょう。
参謀の糜竺も、孫乾も、劉備を強く諫めた(=目上の者の誤りを指摘して改善を促す。)。
劉備はつぶっていた眼を開いて粛々と心持ちを述べた。
高希希監督『Three Kingdoms』の劉備
呂布は当代随一の英雄。
行き場を失って彷徨している者を見捨てるのは義にもとる行為だ。
まして、呂布は大漢の病根であった董卓を撃滅した功労者の一人である。
私を突き動かすものは、漢の復興、その一点に尽きる。
漢の功臣である呂布を見捨てれば、我が根幹はぐらつき、単に私利私欲のために相争う諸侯と何が変わるだろうか。
また、曹操の徐州侵攻に際しては、呂布が曹操の留守をついて兗州を急襲しなければ、我々はこうして生きてはおるまい。
天祐(=天の助け。)には報いねばならぬ。
呂布を迎え入れる準備をせよ。
こうして、劉備は家臣の反対を押し切り、呂布の軍隊が徐州に駐屯することを許可したのであった。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
192 | 董卓、暗殺される。 | 31 | 11 | 37 | 17 | 38 | 54 | 31 |
193 | 曹操、徐州に侵攻する。 | 32 | 12 | 38 | 18 | 39 | 32 | |
194 | 劉備、徐州を領する。 | 33 | 13 | 39 | 19 | 40 | 33 |
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