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許褚、曹操に命を預ける
曹操は、一騎討ちで悪来(=典韋。曹操に近侍する護衛で、斬り込み隊長。)と互角以上に渡り合う許褚が欲しくなった。
そこで、曹操は悪来に退却する振りをさせて許褚を追わせ、深入りした許褚を陥穽(=落とし穴。)に落として捕らえてしまった。
やがて、許褚は曹操のもとに連行されて来た。
兵士たちは許褚を縛り上げ、まるで木材でも運ぶかのようにして引きずって来たのであった。
曹操は烈火の如く怒った。
人一人を連れてくるのに、この仰々しさは何事であるか?
まして悪来とあれだけの死闘を繰り広げた御仁ぞ。
貴様らの人を見る目は節穴か!
曹操は許褚のもとに駆け寄り、自ら縄を解いた。
曹操の威厳と寛容とを一度期に目の当たりにした許褚は、その目を丸くしていた。
高希希監督『Three Kingdoms』の許褚
貴公は何者なのだ?
なぜ賊と戦っておる?
曹操の問いに、許褚は雄弁に答えた。
はい、私は許褚、字は仲康と申します。
ここ豫州沛国譙県(記事下の地図参照。)の農民をしておりましたが、近年黄巾賊の残党が一帯の集落を荒らすようになりまして、私は一族郎党や有志の若者とともに砦を築き、賊に抗っていたのでございます。
と言っても、軍資金や武具などあるわけもなく、また土民の集まりでございますので、剣術など知ろうはずがございません。
拳ほどの大きさの石塊を集めて来て、それを賊に投げつけるなどして戦っておりました。
自分で申しますのも気恥ずかしいことではございますが、私の投げる石は百発百中で、それ以来賊は私の石礫を恐れて攻めて来なくなったのでございます。
許褚は頭を掻きながら、照れ臭そうに話を続けた。
また、こんなこともございました。
砦に食糧がなくなってしまい、困り果てた私は、割合友好的であった賊衆と物々交換をすることになりました。
その際に、米の代価として二頭の牛を連れて行ったのでございます。
しかし、引き渡した途端、牛はびくとも動かなくなり、賊どもも困り果てておりましたので、仕方なく私が賊のアジトまでその牛の尻尾を掴んで連れて行ったのです。
私の怪力に恐れをなしたのか、それからすぐに一帯の賊はきれいさっぱりいなくなったのでございました。
少々自慢話になりましたが、私は人より大きく、力もありましたので、賊を退治するために孤軍奮闘しておりました。
しかし、あなた方がこの周辺の賊を取り締まってくださるならば、私は用無しです。
どうぞ首をはねてください。
許褚の言には恐れや淀みが全くなかった。
信に足る壮士だと、曹操は判断した。
その命はわしのために取っておけ。
わしが窮地に陥った時は、命を懸けてわしを守れ。
許褚は感激し、その日から曹操の斬り込み隊長となった。

許褚の初陣
曹操は汝南・頴川地方(=いずれも現在の河南省。豫州西部。旧都洛陽にほど近い。)を平定し、許(=頴川地方の一部。「許昌」とも。)を当面の拠点に定めた。
賊の降兵数十万を旗下に組み入れ、兵糧は潤沢、そして稀代の豪傑許褚を手に入れた曹操のもとに、兗州に残して来た曹仁から知らせが届いた。
兗州城を守る李封と薛蘭は領民に重い税を課して私服を肥やし、悪事の限りを尽くしている。
軍紀も乱れ、調練など行った試しがない。
攻めるなら今である、と。
曹操は「時は来た。今こそ兗州に還るぞ!」と将兵を鼓舞し、古巣の兗州奪還に向けて進軍を開始した。
曹操が攻めてくると、二将はすぐに撃って出た。
曹操は呂布に散々に撃退され、兗州から逃げて行った匹夫(=取るに足らない者。)の軍隊であるという先入観があったからである。
ご主君。
そろそろ取り立てていただいたご恩に報いとうございます。
あの二将を搦めてご覧に入れましょう。
そう言って、許褚は単騎で二将に向かって馬を駆った。
豪傑とは、およそ矛を一合交えただけで、相手の力量が分かるものである。
許褚は李封と矛を交えると、相手をするだけ時間の無駄と言ったように、捕縛することなく一刀のもとに斬り裂いてしまった。
それを見た薛蘭は色を失い、一目散に兗州城に向かって逃げ出したが、曹操の陣営から放たれた呂虔の矢に首筋を射抜かれ、落馬して事切れてしまった。
二将が討たれたことで、兗州城の兵は機能不全に陥り、みな一斉に剣を捨てて投降したのであった。
曹操が剣を振り上げて大喝すると、将兵は一斉に勝鬨(=勝利を祝して一斉に挙げる掛け声。)を挙げた。
曹操が濮陽城に到着すると、呂布は参謀陳宮の制止を振り切り、全軍を挙げて撃って出た。
高希希監督『Three Kingdoms』の呂布と赤兎馬
曹操の将兵は一気に縮み上がった。
人中に呂布あり、馬中に赤兎(=赤兎馬。呂布の愛馬で、日に千里を駆けると言われる汗血馬。)あり。
この言葉は、遍く当時の人口に膾炙された言葉であったが、許褚は呂布の勇ましい姿を初めて目の当たりにして、武者震いが止まらなかった。
曹操はそれを見て、「お前の好きにするがいい」と言って許褚を出撃させた。
と言うより、呂布の相手が務まるのは許褚を置いて他にはいまいと考えたと言った方が正確だろう。
許褚は単騎、大喝しながら呂布に向かって行く。
しかし、呂布は許褚を知らない。
初陣を終えたばかりの許褚の甲冑は、凡そ歴戦の将軍が身に付けるような威風堂々たる代物ではなかった。
呂布は、お前など相手にならないと言った感じで、相変わらず曹操の兵を蹴散らすことに余念がない。
それでも許褚が矛を向けると、呂布もその者の力量が分かったのか、そこから呂布と許褚の一騎討ちとなった。
戦争をするために、天がこの世にお遣わしになったのではないかと思われる人間であった。
呂布の方天戟は、二十合を超えないうちからすでに許褚の甲冑や鬢の毛を何度もかすめた。
さすがの許褚も、呂布には相手不足のように思われた。
許褚が防戦一方になると、今度は悪来が駆けて行って許褚に加勢したが、驚いたことに呂布はまだ余裕である。
そこから、夏侯惇を始めとして曹操軍の勇将6人までもが向かっていくと、さすがの呂布も危険と判断したか、今日はこれまでと、濮陽城に向けて赤兎の轡を返したのであった。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
192 | 董卓、暗殺される。 | 31 | 11 | 37 | 17 | 38 | 54 | 31 |
193 | 曹操、徐州に侵攻する。 | 32 | 12 | 38 | 18 | 39 | 32 | |
194 | 劉備、徐州を領する。 | 33 | 13 | 39 | 19 | 40 | 33 |
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