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曹操、頴川(許昌)を攻める
蝗害によって兵糧を得られなくなった曹操は、これ以上の長期戦は不利と見て呂布が立て籠る濮陽城に対する囲みを解いた。
そして、基盤となる領土と兵糧の奪取を目論み、汝南・頴川地方(=いずれも現在の河南省。豫州西部。旧都洛陽に近い。記事下の地図参照。)に蔓延る黄巾賊の残党を討伐するために南下した。
この辺りでは、何儀と黄邵という二頭目が賊を束ね、集落を襲っては悪事の限りを尽くし、まるでヒルのように人々の生き血を吸いながら勢力を拡大していた。
曹操は小高い丘の頂に立ち、屯している賊の群れを見下ろしていたが、やがて悪来(=典韋。曹操の護衛。斬り込み隊長。)に「様子を見て参れ」と命令した。
悪来は馬を駆って賊の陣営を物見すると、戻って来て曹操に告げた。
ざっと10万ほどでしょうか、しかし規律は乱れ、統率が取れているようには見えません。
大将の器の程がうかがい知れると言うもの。
正面から矢で攻撃をなさってください。
私は動揺した奴らの右手から襲いかかり、見事賊を蹴散らしてご覧に入れます。
曹操は悪来の言を容れ、すぐさま実行に移した。
まず第一に、急に迫って来た曹操の軍隊に賊は慌てた。
そして、雨のように降り注いで来た矢に恐れ慄いた。
時を同じくして、大きな銅鑼の音と、大音声の鬨の声とともに横合から攻めかかって来た悪来の軍勢に、すっかり戦意を失ってしまった。
悪来が攻めかかると、賊兵は海が割れるように左右に離散した。
逃げ去る者、降伏する者が後を絶たなかった。
そんな中、身の丈七尺はあるだろうか。
馬にも乗らず、鉄棒を軽々と振り回して鬼のような形相で、「やい、曹操出て来い、截天夜叉何曼が相手だ」と呼ばう賊将がいた。
高みから見ていた曹操は嘲り笑って、「誰か、相手をしてやれ」と下知した。
「私が参ります」と言って進み出た李典を遮り、曹洪は馬から降りて一気に駆け下りると、何曼に斬り掛かった。
初め曹洪は劣勢となったが、退くと見せかけて振り向き様に突いた曹洪の剣は何曼の腹部を貫き、何曼は堪らず大地に突っ伏してしまった。
その間に、李典は逃げ遅れた賊の大将黄邵を生け捕りにしていた。

曹操、許褚を得る
残るは何儀である。
何儀はどうも旗色が悪いと感じて、すでに2、300余騎とともに逃亡を図っていた。
悪来は「あれこそ大将に違いない」と、馬の腹に何度も鞭打って徐々に何儀たちとの距離を詰めて行った。
悪来がもう少しで何儀に追いつくという時、何儀の横合から雪崩れ込んで来た500人にも満たない軍勢があった。
その軍勢の頭領とも思われる大男は、馬上から何儀に飛びかかって馬から引きずり落とすと、槍を持ち直そうとした何儀を蹴飛ばし、とうとう馬乗りになって縛り上げてしまった。
そして、何儀を軽々と持ち上げると、自分の馬の背に乗せてもと来た方へ走り出そうとした。
悪来は叫んだ。
待て、お前はこの者をどこに連れて行こうと言うのか?
横取りは許さぬ!
取って返せ!
しかし、壮士は応じない。
悪来はその壮士のもとに駒を進め、説得を試みようとした。
近づいてみると、身の丈八尺(=184㎝)を超える偉丈夫である。
壮士はそう言い放って剣を悪来に向けて来たので、両者はたちまち干戈を交え、火花を散らすことになった。
悪来は慌てて、「待て待て、お前は何者なのだ?」と詰問すると、その者は大喝して答えた。
高希希監督『Three Kingdoms』の許褚
「賊か?それともどこぞの武士か?」と再び悪来が尋ねると、許褚は「おれは農民だ」と答えた。
しかし、彼の剣捌きは農民のそれとは到底思われない。
お前が賊でなければ、お前はおれの敵ではない。
おれは曹操様に仕える将軍である。
悪来がそう言うと、許褚は「曹操?そんな奴は聞いたことがない。そんな奴に何儀を渡しても手柄にはならぬ」と言って、全く聞く耳を持たなかった。
幾度となく曹操を危機から救い、「お前は悪来(=殷の紂王に仕えた怪力の将軍。)の生まれ変わりであるな」と称えられた典韋も、いよいよ劣勢となった。
生まれて初めて脂汗が背中を伝った。
辰の刻(=午前8時ごろ)から午の刻(=正午。)まで二人の激戦は続いた。
後世語り継がれるであろう、見事な一騎討ちとなった。
丘陵から、この一騎討ちの様子を黙々と凝視する者があった。
女を愛する以上に士を愛した曹操は、すっかり許褚が欲しくなってしまった。
両者の馬が、もう一歩も前に進まなくなったところで、互いに明日の再戦を約してその日は引き分けとした。
戻ってきた悪来に、曹操は何事か耳打ちするのだった。
翌日、悪来と許褚はまた雌雄を決するべく一騎討ちを始めた。
そうかと思うと、三十合ほど戟を交えたところで、悪来は反転して自軍の陣営に向かってしまった。
撤兵を命じる太鼓の音が轟く。
曹操自身も五里ほど陣を後退させた。
その翌日、悪来は兵を率いて許褚の砦まで攻めてきた。
昨日の戦で曹操の大軍を後退させた許褚は、もちろん得意の面持ちで悪来に向かって来た。
ところが悪来は、兵たちには「進め!進め!」と指図しながら、自分は馬に鞭打ってすぐに後方に逃れてしまった。
当然、許褚は「卑怯な!今日という今日は逃がさん!」と罵倒しながら追いかけてくる。
しかし、許褚は自分がこの時すでに曹操の術中にはまっていることに気がつかなかった。
深入りした許褚は、曹操があらかじめ掘らせていた落とし穴に、馬もろとも落っこちてしまったのであった。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
192 | 董卓、暗殺される。 | 31 | 11 | 37 | 17 | 38 | 54 | 31 |
193 | 曹操、徐州に侵攻する。 | 32 | 12 | 38 | 18 | 39 | 32 | |
194 | 劉備、徐州を領する。 | 33 | 13 | 39 | 19 | 40 | 33 |
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