【1日5分】あらすじ三国志「一覧」はこちらから!

呂布、鳳儀亭にて貂蟬に会う
献帝に入内するものだと思っていた想い人の貂蟬が、事もあろうに義理の父である董卓の側女にされていたことに、呂布は憤慨します。
そして、呂布は董卓の御殿である郿塢に赴きますが、董卓に一喝され、恐れ慄いて郿塢から逃亡するのでした。
それからと言うもの、呂布には覇気がありませんでした。
董卓に唆され、董卓に汚された貂蟬が哀れでならなかったのです。
どうにかして貂蟬を救い出したい、今できなくともいつか必ずそなたを救ってみせる。
その思いを、哀れな貂蟬に伝えたい。
呂布の脳裡には、そのことばかりが駆け回っているのでした。
ある日、朝議も半ばになり、董卓は呂布がいないことに気がつきます。
侍臣に捜させても、一向に居場所が掴めません。
呂布の愛馬赤兎は、いつもの厩に置かれています。
董卓は何やら胸騒ぎがして、朝議を早々に切り上げ、急いで郿塢に向かうのでした。
その頃、呂布はすでに郿塢にいました。
呂布は一目散に寝殿に向かいます。
すると、貂蟬は寝殿の一室に、相変わらず虚な目をして窓の外を眺めているのでした。
貂蟬は呂布の姿に気がつくと、「将軍、いけません」と言いました。
こんなところにいらしてはなりません。
先日のこともあります、今度相国(=現在の日本で言うところの内閣総理大臣。董卓のこと。)に見つかりましたら、将軍のお命が危険です。
鳳儀亭(=郿塢の外れにある庭園。)にいらしてください。
私もすぐに参りますゆえ。
数日ぶりに再会した二人は、鳳儀亭で抱きしめ合うのでした。
呂布は貂蟬の姿をその目に焼き付けるように、一途に見つめます。
のみならず、これが現実のことであるかを確かめるように、貂蟬の頬に手を這わせたり、貂蟬の手を強く握りしめたり、五感の全てで貂蟬との邂逅を愛おしむのでした。
最近は将軍がいらっしゃらなかったので、私のことはもうお忘れになったのだと悲しみに暮れておりました。
将軍にお会いして、一瞬にしてこの世に色が蘇ったような心地がします。
貂蟬は嬉しうございます。
呂布は貂蟬を、さらに強く抱き締めて言いました。
そなたを忘れたことは片時もない。
私はそなたを諦めない。
いつか必ず迎えに来る。
そのことを、そなたの胸に刻み込んでくれ。
貂蟬は呂布の目を見つめ、「本当でございますね、きっとですよ」と哀願するのでした。
その時、「呂布、どこだ!」と言う怒号がしました。
殺気を帯びた董卓が、鳳儀亭の門扉から現れ出ます。
「早くお逃げください」と、貂蟬は呂布を突き飛ばします。
呂布!
やはりここにいたのか!
父の女に手を出すとは、厚顔無恥な輩め。
殺してやる!
呂布は不意を突かれ、方天戟さえも忘れて逃げ惑います。
董卓はその方天戟をつかみ、呂布に向かって投げつけますが、呂布はすんでのところでそれをかわし、鳳儀亭の外に逃げ出すのでした。

李儒、董卓を諫める
騒ぎを聞きつけた参謀の李儒が、鳳儀亭を訪れました。
相国、今の騒ぎはなんですか?
呂布が戦慄の眼差しで逃げていきましたが。
董卓は怒りが収まらない様子で、李儒に怒鳴るようにして事情を説明します。
呂布め、わしの貂蟬に横恋慕をしおったのだ。
今すぐ呂布を追捕する兵を起こせ。
奴を捕らえて殺すのだ!
それを聞いた李儒は、董卓を諭すようにして言いました。
相国、このような故事がございます。
昔、楚の荘王が功績のあった諸将を集め、酒宴を催したことがございました。
宴もたけなわになった頃、突然一陣の涼風が駆け抜け、宴席の灯火がみな消えてしまい、辺り一面真っ暗闇になったのです。
「暗闇も、かえって涼しくてよいですな」と、みな興を催していたその時、諸将に酌をしていた荘王の寵姫が何者かに接吻されたのです。
寵姫は乱心を働いた者の緌(=冠の左右につける扇状の飾り。老懸とも。)を奪い、暗闇の中、手探りで荘王のもとに駆け戻りました。
そして、荘王に事情を説明し、緌のない者こそが乱心者であるから、どうか罰するようにと懇願したのでした。
しかし、荘王は灯をつけようとした従者を制止し、「わしの寵姫に乱心を働くくらい、諸将は打ち解けていると言うことだ。よいか、みなの者、今すぐ緌を外すのだ」と言って、乱心者が誰かを判明しないようにし、それから再び灯火をつけさせたのです。
後年、荘王は戦で手痛い敗北を喫した時、最後まで荘王の盾となり、身代わりになって倒れた武士がいました。
荘王が「何故、そうまでして我を庇うか?」と問うと、その者は自分がいつぞやの宴席で乱心を働いた者であると告白し、その時のご恩に報いたのだ」と言って、微笑みながら死んでいったそうです。
相国、いまこそ呂布に情けを掛けるときでございます。
女はすぐに手に入りますが、天下はそうはいきません。
貂蟬など、呂布に与えなされ。
その話を聞いた董卓は感銘を受け、すぐさま考えを改め、呂布に貂蟬を譲ろうと考えるのでした。
鳳儀亭の池と池とをつなぐ渡殿で泣いている貂蟬の前に腰掛け、董卓は貂蟬に呂布のもとに嫁ぐよう説得するのでした。
しかし、貂蟬は董卓をきっと睨んで「嫌でございます」と断言するのでした。
先ほど呂将軍は戟を抱えたまま私の方に近寄っていらして、力づくで私を鳳儀亭に連れ出したのでございます。
そのような無骨な方に、私は嫁ぎたくはございません。
相国、私がお嫌いになったのなら、はっきりおっしゃってください。
私は相国を困らせたくはありません。
もし不必要な存在となりましたのなら・・・
その時、貂蟬は渡殿の柱に向かって駆け出し、頭を強く打ち据えたのでした。
貂蟬は気を失い、頭からは激しく出血しています。
貂蟬よ、貂蟬よ!
すまなかった!
分かったぞ、もうお前を離したりはしない。
許してくれ!
どうかわしを許してくれ!
李儒はその様子を目にして深く嘆息し、いつまでも天を仰ぐのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
コメント