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貂蟬の輿入れ
一度は貂蟬を娶ることが決まっていた呂布でしたが、董卓が貂蟬を献帝のもとに貴妃(=皇帝の妃の称号。)として入内させることが決まり、呂布は悲嘆に暮れるのでした。
呂布は、貂蟬と来世での結びつきを祈願して別れた翌日、董卓のもとに出向き、貂蟬に対する自分の恋情を伝えるのでした。
しかしなあ、奉先(=呂布の字。)よ、貂蟬の入内はもう決まったことなのだ。
詔は発せられ、輿入れは明日と決まっておる。
ここに来て入内を白紙に戻すことは、このわしでもできぬ。
大の男が女々しく女一人を惜しむでない、諦めよ。
貂蟬を是が非でも我が物としたい董卓は、義理の息子であり、董卓軍の要である呂布の懇願さえも斥けたのでした。
輿入れの日がやって来ました。
呂布は、王允の邸宅から万楽宮(=皇帝の住まう宮殿。)に向けて出発する貂蟬の馬車を、ただただ見守ることしかできませんでした。
車窓の奥に俯いた貂蟬の目には、涙が光っています。
詔が下った以上、これより先、貂蟬は天子(=皇帝。)の妃です。
呂布は、もはや貂蟬に手を差し伸べることもできません。
その夜、呂布は万楽宮の門前の階に腰掛け、何を待つともなく呆然としているのでした。
夜が明けた時、そこに王允が現れました。
奉先殿ではありませんか。
ここで何をしておられるのですか?
王允が不思議そうに尋ねると、呂布は「少しでも貂蟬の側にいてやりたいと思い、こちらにいたのです」と、憔悴しきった様子で答えるのでした。
王允は驚いた表情をして、呂布に残酷な事実を伝えるのでした。
将軍、貂蟬はこちらにはいませんぞ。
貂蟬は郿塢(=董卓の御殿。)にいます。
王允がそう言うと、呂布は王允に掴みかかり、「郿塢ですと!なぜです、なぜ郿塢にいるのです?」と詰め寄るのでした。
将軍。
相国(=現在の日本で言うところの内閣総理大臣。董卓のこと。)は貂蟬を献帝に入内させると言いましたが、その実ご自分の側女に迎えたのです。
今ごろ貂蟬は、董相国の臥房におりましょう。
「あの獣物め!」と、呂布は烈火の如く怒り狂いました。
そして、すぐさま赤兎馬を駆って、長安の郊外に位置する郿塢に急行するのでした。

呂布、董卓の臥房に貂蟬を見る
郿塢に到着した呂布は、董卓が寝起きをする寝殿に向かいました。
呂布は、董卓とは親子の契りを交わした間柄で、参謀の李儒と並んで董卓から最も寵愛されている臣下でした。
そのため、衛兵による身体検査は暗黙の了解で行われず、さらに寝殿に入る時でさえも帯剣を許され、董卓の臥房まではたやすく行くことができました。
呂布が董卓の寝所に向かおうとすると、控えの間には、虚な表情をして鏡の前に座っている貂蟬がいました。
貂蟬は呂布の姿を見ると、両の手の平で顔を覆い、呂布に背を向けてさめざめと泣くのでした。
将軍。
私はもはや汚れた身となりました。
将軍とは来世の契りを祈願いたしましたが、心は昔と変わらなくとも、身の穢れは未来永劫消えることはありません。
どうか私のことはお見捨て下さいませ。
呂布は堪まらず、貂蟬を抱き寄せます。
「そんなこと関係あるものか、約束したではないか」と、呂布は貂蟬を強く抱きしめるのでした。
貂蟬!貂蟬!
何をしておるのだ?
化粧直しはもう済んだであろう?
早くこちらに来るのだ?
聞いておるのか?
それは臥房にいる董卓の声でした。
将軍、早くここからご退出ください。
相国に見つかったら大変です!
さあ、早く!
その時でした。
肥満した体躯を揺らして、控えの間に董卓がその姿を現しました。
奉先!
ここで何をしておるのだ?
声もかけずに臥房に侵入するとは何事だ。
もう金輪際、ここへの立ち入りは許さん!
早く出ていくのだ!
董卓の剣幕に圧倒され、呂布は一目散に郿塢を後にするのでした。
呂布が出て行った後、貂蟬は激しく泣いていました。
「どうしたのじゃ、貂蟬よ、何があったのだ?」と尋ねる董卓に、貂蟬は震えた声で訴えるのでした。
将軍がいきなり入っていらして、私を強引に連れ去ろうとしたのです。
怖くて、恐ろしくて、私は声も出せませんでした。
相国、私を片時もお側からお離しにならないでください。
どうかお約束なさってください。
そう言って、貂蟬は董卓にしがみつき、いつまでも泣きじゃくるのでした。
奉先め、わしの息子だからと言って傍若無人な振る舞いをしおって。
これでは君臣の関係が保てぬ。
困った奴じゃ。
董卓が怒りを露にすると、貂蟬は「いけません」と言って首を横に振るのでした。
相国、私のために将軍と争ってはなりません。
呂将軍は軍の要。
相国にはこれからも将軍が必要でございます。
私が隙を見せたのが悪いのです。
どうか私を厳しくお叱りになって下さい。
貂蟬が余りにもしおらしく言うので、董卓は貂蟬を抱き寄せ、「分かった、分かったぞ、貂蟬」と言って、いつまでも貂蟬の頭を撫でるのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
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