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王允、董卓を自邸に招く
王允は、まず呂布を貂蟬に会わせて、呂布の恋の炎を燃え立たせることに成功しました。
これで連環の計の半分は成った。
あとは、董卓に貂蟬を会わせるだけだ。
貂蟬を見れば、強欲の董卓は必ずや貂蟬を自分のものにしたいと考えるはずだ。
呂布と董卓が相争う日も近い。
朝議の間中、王允はそのことばかり考えていました。
朝議が終わって献帝がご退廷なさり、文武百官が万楽宮を退くと、王允は董卓を呼び止めて言いました。
相国(=現在の日本で言うところの内閣総理大臣。董卓のこと。)、拙宅の梅の花が見頃を迎えてございますので、不躾ながら、ぜひ明日にでも我が邸にお越し下さいませ。
宴の用意をしてお待ちしておりますゆえ。
司徒(=三公の一つ。行政を司る長官。)王允は公卿大臣からの信望熱く、漢に対する忠義も並々ではなかったので、董卓は王允を警戒するべき人物と見なしていました。
ところが、まさか王允から梅見の宴に招待されるとは思ってもみなかったので、董卓の喜びようは尋常なものではありませんでした。
なに?
司徒殿がわしを招待してくれるのか?
参るぞ、明日と言わず、今日行くぞ。
宴の準備などせんでよい。
我が方で用意させよう。
はは、愉快。
実に愉快だ!
その後、董卓は戟を構えた数百の衛兵や侍臣、宴席を設えさせるための侍女を引き連れ、さながら遠征に赴く行軍のような物々しさで、王允の屋敷を訪れたのでした。
相国、ようこそ拙宅へお越しくださいました。
本日、相国をお呼びしたのは言うまでもありません。
天文を見るにつけ、もはや漢の命運は潰えたように存じます。
相国は献帝の後ろ盾として、その政治的手腕を遺憾なく発揮され、今や文武百官みな信服しております。
先の逆賊袁紹ら連合軍を打ち破ったこと、またその逆賊袁紹と公孫瓚の戦を仲裁なさったこと、天下の民は相国の威勢と度量の深さに畏敬の念を抱いております。
また、知謀優れる李儒殿が参謀を務め、合戦ともなれば向かう所敵なしの呂奉先(=「奉先」は呂布の字。)殿を筆頭に李傕殿、郭汜殿が兵を率い、その陣容は諸侯を圧倒しております。
堯が舜に帝位を禅譲(=世襲することなく、徳の優れた人物に帝位を譲ること。)したように、今こそ相国が献帝に代わり帝位に即かれるべきと存じます。
かねがね李儒からは帝位に即くべきとの進言はありましたが、公卿大臣のまとめ役たる王允の口から禅譲の言葉を聞いた董卓は有頂天となるのでした。
しかし、一転不安も覗かせます。
だがなあ、公卿大臣の中には、依然として漢に対する忠誠を露骨に口にする者も多い。
時期尚早じゃ。
王允は軽く首を横に振り、董卓に断言します。
ご安心下さい。
私がまとめてご覧に入れましょう。
この禅譲は天意なのですから、反対することなど誰ができましょう。
ささ、政の話はこれまでにして、まずは一献。
王允が手を叩くと、呂布を招いた時と同じように、王允の侍女たちによる歌舞が披露されました。
そして、例によってそこに貂蟬が加わると、董卓の熱視線は案の定、貂蟬ただ一人に向けられるのでした。
し、司徒殿。
あの女子は何者だ?
名は何と申す?
董卓は贅肉のついた右手で貂蟬を指差し、王允に尋ねます。
王允が答えと、董卓は卓の上から身を乗り出すようにして貂蝉の演舞に見入るのでした。
まさか、司徒殿はこのような麗しい娘を隠し持っていたとは・・・
このような美しい生娘を、わしは見たことがない。
まるで天女じゃ。
歌舞が終わると、董卓はすぐに貂蟬を傍らに座らせ、恥じいる貂蟬の頬に触れたり、手を握ったりしました。
「この女を我がものとしたい」と董卓は考えますが、しかし司徒の娘となるとそう簡単に自分の側室に迎え入れることは出来ません。
迎え入れたとしても、婚儀には時間がかかり、すぐにでも自邸に連れ帰ることは叶いません。
司徒殿、貂蟬を献帝の貴妃(=皇帝に仕える妃の称号。)にいたそう。
今日すぐにでも万楽宮に住まわせ、宮廷のしきたり、所作を学ばせるのだ。
董卓がそう提案すると、王允は「本日でございますか?」と驚きを露にします。
それはあまりにも急すぎます。
天子(=皇帝。)との婚儀にはまず詔を発して結納を済ませ、輿入れの儀式を執り行わなくてはなりません。
少なくとも一月は必要かと。
王允は、董卓が貂蟬を自分の物にしようとしている魂胆を見抜いていました。
そのため、すぐにでも董卓の申し出に賛同したいという気持ちが込み上げてきます。
しかし、この謀が露見してしまわないように、敢えて牽制するような言葉を投げかけ、自然を装ったのでした。
宮廷の儀式には何事も時間がかかりすぎる。
いまは戦時であるぞ。
わしはいつまた戦場に赴くか分からぬ。
わしが戦に行けば、半年は婚儀が執り行えぬ。
今日が無理なら明後日だ。
それなら準備も行えよう。
こうして、貂蟬は献帝のもとに輿入れすることが決まったのでした。

呂布と貂蟬の誓い
翌日のことでした。
王允、出て来い!
呂布だ。
今すぐ門を開けろ!
それは呂布の怒声でした。
呂布は「王允の娘」が献帝のもとに入内するという話を聞きつけ、血相を変えて王允のもとを訪れたのでした。
帝に輿入れすると噂される「そなたの娘」とは、貂蟬のことであろう?
何がおれに貂蟬を譲るだ。
この二枚舌め。
呂布は手に持っていた方天戟で、今にも王允を貫こうという勢いでした。
奉先(=呂布の字。)殿、これには訳があるのだ。
王允は、ひどく落胆した様子で話を続けます。
昨日、董卓相国が我が拙宅に梅見に訪れ、貂蟬を献帝の貴妃として入内させるとおっしゃったのです。
しかも、戦時であるから早急に婚儀を済ませたいとおっしゃって。
この私が、どうして董相国のお申し出に反対することなど出来ましょうか?
「畜生!」と、呂布は方天戟を地面に叩きつけ、いつまでも地面を睨みつけるのでした。
その夜、呂布は貂蟬をいつまでも抱き寄せ、悲しみの涙を止めどなく流すのでした。
そなたを離したくない。
出来ることなら、このままそなたを奪い、赤兎(=呂布の愛馬、赤兎馬のこと。)の背に乗せてどこか遠い異国にでも連れ去ってしまいたい。
呂布の涙がまた一つ、貂蟬の頬を伝ってこぼれ落ちます。
将軍のお言葉、嬉しうございます。
一度は嫁ぐと決めたお方、今生では添い遂げられなくとも、将軍がいつまでも私を強く思っていてくだされば、来世ではどうしてまた巡り会えないことがございましょうか。
その貂蟬の健気な言葉を聞いた呂布は、「貂蟬、貂蟬」といつまでも繰り返し名を呼び続けるのでした。
王允が戸を叩きます。
それくらいになさいませ。
もし相国に知れたら、奉先殿と言えどもただでは済みますまい。
今日はお帰りを。
呂布は腸が引きちぎられる思いで、王允の屋敷を後にするのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫策 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 14 | 30 | 7 | ||
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 6 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 9 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 14 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 15 | 36 | 52 | 29 |
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