【1日5分】あらすじ三国志36「王允、貂蟬に跪く」|大泉洋主演『新解釈・三國志』応援企画!

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三国志
大学で中国文学を学び、長年国語の教員を勤めてきた経験を活かして、分かりやすく、簡潔に、それでいて深イイ三国志のあらすじ紹介を行っていきたいと思います! 『三国志』に興味はあるけど小説を読んだりドラマを見たりする時間はない、でも簡単なあらすじだけではもの足りない・・・。 そんな方にはぴったりです!

 

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王允、貂蟬に跪く

謀反むほんの疑いで殺害された司空しくう(=政策立案を司る長官。)張温ちょうおんの仲間を捕縛するために王允おういんの邸宅を訪れた呂布りょふは、王允の娘貂蟬ちょうせん美貌びぼうに我を忘れてしまうのでした。

 

そして、その光景を目撃した王允は、董卓とうたくを倒すための、ある秘策を思いつくのでした。

 

その夜、王允は貂蟬を呼び出すなり、突然ひざまずくのでした。

 

父上、なりません。

何故なにゆえ私などにこのようなお姿をなさるのですか?

娘などに跪いてはなりません。

 

王允は貂蟬の手を取り、落涙らくるいしながら懇願します。

 

いまわしは、娘に対して跪いているのではない。

この大漢だいかん逆賊ぎゃくぞくから救う聖女に対してこうべを垂れるのだ。

貂蟬よ。

どうか、どうかこれから父の言うことを承知してくれ。

 

突然の出来事に貂蟬は慌てふためき、なんとかして王允を起立させようと、王允の腕に取りすがりました。

 

父上は身寄りのない私をここまで育てて下さいました。

まして私への接し方は、本当のお子たちと何一つ分け隔てのないもの。

学問や諸芸まで修めさせてくださいました。

この御恩は、死んでも返しきれるものではございません。

父上のおっしゃることを、どうしてこの貂蟬が断れましょうか。

何なりとお申し付けください。

 

貂蟬は涙ながらに、父王允の申し出を快諾するのでした。

 

よくぞ申してくれた。

わしはこれから手塩てしおにかけて育ててきたお前に、破廉恥はれんちで、猥褻わいせつで、下劣極まりないことを言わねばならぬ。

しかし、これは天下を救う唯一の方法なのだ。

父のこの心苦しさを、どうか理解した上で聞いておくれ、貂蟬。

 

貂蟬はそでを何度もその両の目に当てがい、「なんなりとお申し付けください」と繰り返し、精一杯真心を込めて答えるのでした。

 

賢いお前は気がついただろうが、呂布はお前に恋をしておる。

今ごろ、呂布の心はお前で満たされていることだろう。

折を見て、わしは呂布をこの屋敷に招く。

その時こそ、貂蟬、お前には呂布をいた振りをして欲しいのだ。

 

貂蟬は王允のまなこを見つめ、確かめるように尋ねます。

 

私が呂布様のもとにとつげば良いのですね?

 

王允は軽く首を横に振ってから、また苦しそうに話し始めました。

 

貂蟬よ、話はここからなのだ。

呂布にお前を嫁がせる約束を取り付けた後、今度はここに董卓を招き、お前を接見させるつもりだ。

お前は都一の美人。

郿塢びうまう、どんな侍女じじょにも負けはせぬ。

董卓は欲深く、独占欲の強い男だ。

董卓がそなたを見て、見染みそめぬはずがない。

必ずやお前を我が物としようとするだろう。

董卓には知謀にけた李儒りじゅ、そして稀代きだいの英雄呂奉先りょほうせん(=「奉先」は呂布のあざな。)がいる。

しかし、このはかりごと連環れんかんの計が上手く行けば、呂布と董卓はお前を取り合い、十中八九仲違なかたがいするはずだ。

呂布なき董卓は翼を失った禿鷹はげたか

片足をもがれた狼だ。

その時こそ董卓を討ち、この大漢に再び秩序を取り戻すことができるのだ。

 

貂蟬の顔から、みるみる色が失われていきます。

 

その瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちます。

 

18歳の初心うぶな貂蟬には、あまりにも残酷な請願でした。

 

貂蟬は黙ったまま、ゆっくりと立ち上がり、そのまま自室にこもるのでした。

 

貂蟬様、ご主人様のご様子がおかしうございます。

もう3日も朝議に参ずることなく、また飲食もしておりません。

息もえのご様子。

このままでは、ご主人様のご容態ようだいが危ぶまれます。

愛娘まなむすめの貂蟬様が行って差し上げれば、きっとご回復なさるはずです。

 

貂蟬はそれを聞くと、ゆっくり腰を上げ、王允のもとに向かうのでした。

 

涙はすでに枯れ果てていました。

 

この3日間、この貂蟬とて一雫ひとしずくしたたりさえ口にはしていませんでした。

 

貂蟬は王允の前に跪くと、「父上、先日のお話、お引き受けします」と力なく言うのでした。

 

だからどうか、お食事をおり下さい。

みな、父上のことを心配しております。

 

その言葉を聞いた王允の目からはいつか涙があふれ、貂蟬の手を取るなりいつまでも「すまない、すまない」と繰り返すのでした。

 

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連環の計、発動

翌日、王允は呂布の私邸に、見事な玉で装飾された黄金冠おうごんかんを贈ったのでした。

 

司徒しと(=行政を司る長官。王允のこと。)殿がなぜ私に?」と疑問を覚えつつも、自分の心を捉えて放さない貂蟬に会う口実ができたと胸を弾ませながら、呂布は赤兎馬せきとばって王允の邸宅に向かうのでした。

 

「司徒殿、あの黄金冠はどういう意味ですかな?」と呂布が尋ねると、王允は事もなげに答えました。

 

あれは、日頃相国しょうこく(=現在の日本で言うところの内閣総理大臣。董卓のこと。)への忠勤に励む将軍への敬意の品。

国家の英雄を称える賛美の品です。

怪しまず、お受け取り下さい。

せっかくお越しくだされたのだ、今日はごゆるりと当屋敷でおくつろぎ下さい。

これ、酒を持って参れ。

 

王允は美酒で呂布をもてなしながら、董卓相国にとって呂布がどれだけ欠かせない存在であるか、王允がいかに呂布を英雄視しているかを訴え掛け、呂布をすこぶる有頂天うちょうてんにさせたのでした。

 

えんもたけなわになった頃、王允は「酒だけではきょうに乏しい、我が侍女じじょたちの歌舞かぶをご披露しよう」と言って、女たちを舞わせました。

 

呂布はその女の中に、恋してやまない貂蟬の姿を探します。

 

しかし、うるわしき貂蟬の姿は見つかりません。

 

「司徒殿、先日お見かけしたあの・・・」と呂布が言い掛けたその時、仙女せんにょかと見まがうほどの妖艶ようえんさをたたえて、一人の娘が歌舞の中央に分け入り、見事な演舞を呂布に披露するのでした。

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王允が酒を勧めても、もはや呂布は聞く耳を持たず、一心に貂蟬の舞いに見惚みとれています。

 

あの女性は司徒殿の侍女ですか?

 

楽女がくじょが奥に下がった後、呂布は王允に尋ねました。

 

いえ、あれは我が娘の貂蟬にございます。

普段は宴には参じませぬが、奉先殿がいらしているとあっては歌舞にも花がなければなりません。

故に、貂蟬にも舞わせたのでございます。

よもや、貂蟬がお気に召しましたかな?

 

呂布は武人らしく少し照れた様子で、その問いには直接答えず、「あれほどの女性は郿塢びう(=董卓の御殿。800人以上の美女が董卓に伺候しこうしていた。)にもおらぬ」とだけ答えるのでした。

 

王允は微笑し、「これ、貂蟬をこちらへ!」と言って貂蟬を再び宴席に呼び寄せ、呂布の隣に座らせるのでした。

 

貂蟬は先日と同じように、その端正な顔をしゅに染め、呂布に面を見せることなくうつむいたまま、呂布に側に控えるのでした。

 

なんと気高くお美しい。

まさに天女てんにょだ。

 

呂布は貂蟬の美貌に釘付くぎづけになります。

 

すると、王允は改まった口調で呂布に言いました。

 

そんなにお気に召しましたのなら、将軍に差し上げます。

貂蟬も、将軍に思いを寄せている様子。

貂蟬を将軍にお譲りできるのであれば、父としてはこの上ない幸福でございます。

 

「この私に?」と、呂布は驚きます。

 

ええ、将軍はいまや董卓相国の懐刀ふところがたな

私はこの貂蟬を、一角ひとかどの英雄に嫁がせたいと常々考えておりました。

こちらからお願い申し上げたいくらいでございます。

 

王允は呂布に深々とこうべを垂れて、「何卒なにとぞ」と懇願します。

 

呂布は哄笑こうしょうして、「必ずですぞ、司徒殿!」と満足げに言うのでした。

 

ええ、承知いたしました。

しかし、今日はもう遅うございます。

これ以上遅くなれば、相国に怪しまれましょう。

今晩はこれにてお帰りください。

また吉日をもって婚儀の話を進めることにいたしましょう。

 

それを聞いた呂布は、顔面に喜悦きえつみなぎらせ、意気揚々と帰っていくのでした。

 

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西暦 出来事 年齢
劉備 孔明 曹操 孫策 袁紹 董卓 呂布
前202 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。
前157 景帝が漢の皇帝に即位する。
168 霊帝が漢の皇帝に即位する。 7 13 14 30 7
181 何氏が霊帝の皇后となる。 20 26 6 27 43 20
184 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 23 3 29 9 30 46 23
189.5 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
189.9 少帝が廃位され、献帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
190.1 反董卓連合軍が結成される。 29 9 35 15 36 52 29
190.2 董卓、都を長安に遷す。 29 9 35 15 36 52 29

 

以上のあらすじは、主に吉川英治よしかわえいじ『三国志』、陳舜臣ちんしゅんしん『秘本三国志』『小説十八史略』、横山光輝よこやまみつてる『三国志』、王扶林監督『三国志演義』、高希希監督『Three Kingdoms』などをベースにしています。そのため、羅貫中らかんちゅうの『三国志演義』や陳寿ちんじゅの『正史三国志』とは内容が異なり、少なからず脚色が含まれることがあります。あらかじめ、ご了承下さい。

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