【1日5分】あらすじ三国志35「董卓、血の杯を与える」|大泉洋主演『新解釈・三國志』応援企画!

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三国志
大学で中国文学を学び、長年国語の教員を勤めてきた経験を活かして、分かりやすく、簡潔に、それでいて深イイ三国志のあらすじ紹介を行っていきたいと思います! 『三国志』に興味はあるけど小説を読んだりドラマを見たりする時間はない、でも簡単なあらすじだけではもの足りない・・・。 そんな方にはぴったりです!

 

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董卓、血の杯を与える

孫堅そんけんが劉表によって殺害された頃、新都長安(=現在の陝西せんせい西安せいあん市。司隷しれい司州ししゅう)。記事下の地図参照。)では董卓とうたくの専横がいよいよ苛烈かれつを極めるものになっていました。

 

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高希希監督『Three Kingdoms』の董卓

 

董卓は自分の弟の董旻とうびん御林軍ぎょりんぐん(=天子てんし(=皇帝。)を警護する軍隊。)を指揮させ、甥の董璜とうこう侍中じちゅう(=王宮を管理する役人。)に任命して天子の側に仕えさせました。

 

これによって董卓は王宮のあらゆる所に目を光らせ、少しでも自分に批判的な言動を取る者がいようものなら、即座に連行して投獄、または斬首刑に処すのでした。

 

そして、自らは郿塢びうと呼ばれる、天子の宮殿をもしの絢爛豪華けんらんごうか御殿ごてんまい、天下からかき集めた財物をあまた所蔵し、約20年分の兵糧ひょうろうを蓄え、そして15歳から20歳までの見目みめうるわしい800余人の美女たちを自分の側近くにはべらせたのでした。

 

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高希希監督『Three Kingdoms』の郿塢

 

ある日、董卓は文武百官を招待し、うたげを催しました。

 

酒宴もたけなわになった頃、剣をいた呂布りょふ(=一騎当千の勇将。董卓とは親子の契りを交わしていた。)が闊歩かっぽして現れ、何やら董卓に耳打ちをするのでした。

 

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高希希監督『Three Kingdoms』の呂布

 

一切の歓談が止み、一同に緊張が走ります。

 

そこに居合わせた者は、固唾かたずを飲んでその様子を見守ります。

 

董卓は呂布に「決して逃がすでないぞ」と指示を出したかと思うと、呂布は司空しくう(=三公の一つ。政策立案を司る長官。)張温ちょうおんの前まで歩み出て、張温のもとどり(=髪を頭の上で束ねた部分。)をつかんで引きずり、どこかに連行していったのでした。

 

以下、残酷な場面となりますので閲覧注意願います。

苦手な方は、次章の「王允の嘆き」までスクロールしてください。

 

半刻はんときが過ぎた頃、今度は陪膳ばいぜん係の者らが複数のぼんを奉じてやって来て、中央の卓にそれを置きます。

 

文武百官は、その盆の上にある物を見てぎょっとしました。

 

みるみるうちに顔は青ざめ、中には腰を抜かす者もいたくらいです。

 

盆の上には、生気を失って青黒くなった張温の首や手足が乗っていたのでした。

 

百官どもよ。

張温は事もあろうにわしの言いつけに逆らい、袁術えんじゅつと内通していたという報告が入ってなあ。

袁術と言えば、先年反乱を起こした袁紹えんしょうの弟。

献帝けんていの威光にあらが逆賊ぎゃくぞくである。

今日は見せしめとして、この逆賊の血肉を食してやろうと思ってな。

 

董卓がそう言うと、今度は侍女じじょたちが百官に杯を手渡します。

 

そして、それぞれの杯には、何やら赤い液体がなみなみと注ぎ込まれるのでした。

 

公卿こうけい大臣だいじんたちは恐れおののきます。

 

その場で嘔吐おうとする者もありました。

 

それは、紛れもなく張温の血を混ぜた酒だったのです。

 

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王允の嘆き

司徒しと(=三公の一つ。行政を司る長官。)王允おういんは自らの邸宅に戻るなり、中門の辺りで嘔吐おうとしました。

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「父上!父上!」と、一人の少女が心配して駆け寄ってきます。

 

それは王允の娘、18歳になる絶世の美女貂蟬ちょうせんでした。

 

貂蟬はもともと身寄りのない孤児でしたが、市に売られているのを哀れに思った王允が引き取り、養育したのでした。

 

王允は、当時公達きんだち(=貴族の子弟。)が修めるべきとされていた学問を貂蟬に学ばせ、あわせて女子が身に付けることをよしとされていた諸芸をも惜しみなく修めさせました。

 

まさに、才色兼備という言葉が相応ふさわしい女性でした。

 

お父上、どうなさったのですか?

お顔の色が優れません。

九重ここのえ(=宮廷。)で何かおありでしたか?

 

すると、王允は天をあおいで叫びました。

 

蒼天そうてんよ!

先帝せんていよ!

この王允はけだものでございます。

董卓が帝をほしいままにしてより2年、この王允は董卓を取り除くこと叶わず、洛陽らくようは炎上して歴代の天子の祖廟そびょう(=歴代の帝王の御霊みたままつる聖堂。)はあばかれ、今日も志ある者が無念の死を遂げました。

私は董卓に命じられるまま、その者の血をすすったのです。

先帝よ、どうかこの王允のはらわたをかっさばいて罰をお与え下さい。

 

貂蟬は王允に優しく取りすがりながら、「父上、誰が聞き耳を立てているか分かりません、滅多めったなことをおっしゃってはなりません」と涙ながらに懇願するのでした。

 

すると、悲嘆に暮れる王允のもとに、慌てた様子の従者がやって来て急を告げました。

 

呂布です!

ご主人様、呂布殿がお越しになりました。

呂布殿が、軍隊を引き連れてやって来ました。

 

門を強く叩く音が聞こえます。

 

司徒殿!

いるのであろう!

この門を開けよ!

 

門を叩く音は激しさを増していきます。

 

王允は急ぎ服を整え、貂蟬に茶の準備をするよう指示して自ら門まで出向きます。

 

これはこれは奉先ほうせん(=呂布のあざな。)殿、いかがなされた?

 

王允は強いて落ち着いた様子で、うやうやしく呂布を出迎えます。

 

司徒殿、悪く思わないでください。

逆賊張温の一味が逃亡し、行方不明になっている故、公卿大臣の邸宅を一軒一軒家宅捜索し、不満分子ぶんし摘発てきはつを行っているところなのです。

何卒なにとぞ、ご協力を。

 

王允は、先ほど自分がした董卓に対する批判が外に漏れ出たのではないことが分かると、ほっと胸をで下ろすのでした。

 

それは大事な任務。

当家に怪しい所はございませんが、どうぞ隅々すみずみまでご覧ください。

 

王允がそう言うと、呂布は「かたじけない」と兵士たちに合図し、王允の邸宅の内部を調べさせたのでした。

 

奉先殿、お疲れでございましょう。

珍しい茶があるのです。

ささ、奉先殿はぜひこちらへ。

 

王允は呂布を客間へと案内し、検分けんぶんが終わるまでこちらでくつろぐよう勧めるのでした。

 

そこに、茶を持って貂蟬が入ってきます。

 

常には従者が行うことですが、王允を案じた貂蟬は、呂布が事に及ぼうとしたときには、自ら身を呈して王允の命乞いのちごいをしようと考えていたのでした。

 

貂蟬は恥じらい、はすに、うつむき加減に呂布に相対あいたいしますが、それでも貂蟬の端正な顔立ち、妖艶ようえんたたずまいは漏れ伝わります。

 

呂布は一瞬で、貂蟬に心を奪われてしまいました。

 

呂布が貂蟬の前で呆然ぼうぜん立ち尽くしているのを見た王允の顔面には、いつか喜色きしょくよみがえって来るのでした。

 

これは行けるかも知れん・・・

 

この時、王允の脳裡のうりには、董卓を倒して大漢を復興する、ある秘策が駆け巡っていたのでした。

 

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西暦 出来事 年齢
劉備 孔明 曹操 孫策 袁紹 董卓 呂布
前202 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。
前157 景帝が漢の皇帝に即位する。
168 霊帝が漢の皇帝に即位する。 7 13 14 30 7
181 何氏が霊帝の皇后となる。 20 26 6 27 43 20
184 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 23 3 29 9 30 46 23
189.5 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
189.9 少帝が廃位され、献帝が即位する。 28 8 34 14 35 51 28
190.1 反董卓連合軍が結成される。 29 9 35 15 36 52 29
190.2 董卓、都を長安に遷す。 29 9 35 15 36 52 29

 

以上のあらすじは、主に吉川英治よしかわえいじ『三国志』、陳舜臣ちんしゅんしん『秘本三国志』『小説十八史略』、横山光輝よこやまみつてる『三国志』、王扶林監督『三国志演義』、高希希監督『Three Kingdoms』などをベースにしています。そのため、羅貫中らかんちゅうの『三国志演義』や陳寿ちんじゅの『正史三国志』とは内容が異なり、少なからず脚色が含まれることがあります。あらかじめ、ご了承下さい。

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