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孫権、父を諫める
孫堅は天下に覇を唱えるべく、中原(=黄河中下流域。中国の中心。)進出への足掛かりとなる荊州(=現在の湖北省南部。記事下の地図参照。)の劉表を攻める決断をしました。
出陣の前日、孫堅の弟孫静が訪ねてきました。
孫堅の息子である孫策(=字は伯符。孫堅の長男。17歳。)、孫権(=字は仲謀。同次男。10歳。)、孫翊(=同三男。)、孫匡(=同四男。)を伴ってです。
兄上を諫め(=目上の者の誤りを指摘して改善を促すこと。)に参りました。
この度の出兵には義がありませぬ。
大義のない戦は必ず破れます。
このお子たちの安泰のためにも、どうかご再考を。
これは奥方呉夫人のご依頼でもあります。
孫静が言い終わるや否や、孫堅は孫静を怒鳴りつけて言いました。
女子どものことを考えて、出兵の前日に国の大事を左右したりせぬわ。
劉表は何かにつけて、我が江東に牙を剥いてきた。
孫静よ、私がいつまでも健在と思うな。
わしがいなくなった後に荊州兵(=劉表の軍隊。)が攻めてきたら、いかに対処をするつもりなのか。
そう言うと、「恐れながら」と次男孫権が歩み出て言いました。
父上はお亡くなりにはなりません。
いつまでもご健在でございます。
父上のお心の中には江東のことだけではなく、天下のことがあるのではありませんか?
伝国璽(=歴代の帝王が継承して来た伝国の印綬。)を手に入れて以来、お父上は変わられてしまいました。
その昔、伝国璽を手に入れた楚は、秦によって滅ぼされました。
そして、その秦は漢によって滅ぼされ、その漢の命運もいまや風前の灯でございます。
どうか伝国璽をお捨てになって、今しばらく江東の富国強兵にご尽力ください。
高希希監督『Three Kingdoms』の孫権
孫堅はぎょっとしました。
まだ年端もゆかぬ孫権の言葉に、孫堅は頼もしさを感じるとともに、おかしさもまた感じるのでした。
孫堅は孫権を膝の上に座らせ、孫権の頭を撫でながら言いました。
どうやら張昭(=字は張承。孫堅の腹心の一人。内政の長。)にしごかれているようだな。
お前の知謀は天賦の才だ。
お前の言葉、この父は肝に銘じよう。
後々はしっかり策(=孫策。)を助け、この江東を守り抜くのだ。
よいな?
孫権は父の目を見つめながら頷きます。
この度の戦は、江東の地盤固めには欠かせぬ大一番となろう。
攻めは最大の防御なり。
絶対に勝利するのだ!

孫堅、空船を浮かべる
翌日、孫堅は劉表のいる襄陽(=現在の湖南省。荊州北部。)攻略を目指し、第一の防御線となる江夏の漢江に向けて軍船を進めました。
漢江にはすでに劉表軍の要塞が築かれ、劉表の寵臣黄祖が待ち受けています。
まず孫堅は、黄祖を攻める振りをして軍船を進め、要塞の様子を探りました。
すると、すぐに黄祖の軍船が出撃し、矢を射かけて応戦します。
川岸に近づくや、今度は鉄騎兵が駆けつけて来るなど、まともに攻めれば相当の兵の損耗が予想されるのでした。
そこで、孫堅は一計を案じます。
その夜、孫堅は襄陽の要塞に幾艘かの軍船を侵入させました。
黄祖はこれに気づくと、すぐに軍船を繰り出して例によって矢を射掛けます。
黄祖が孫堅の軍船を制圧してみると、中には誰も乗っておらず、幾本かの松明が灯されているだけでした。
次の日も同じように、孫堅は無人の軍船を要塞に向けて侵入させました。
黄祖は再度奇襲を疑い、また軍船を急行させて矢を射掛けます。
しかし、前日と同じく、軍船にはまた誰も乗船しておらず、松明が船の各所に装着されているだけでした。
次の日も、そのまた次の日も、要塞には空船が向かって来ます。
「今度も無人であろう」と黄祖は思いますが、しかし撃って出ないわけにはいかず、毎夜出撃して矢を射掛けます。
しかし、案の定、軍船には誰も乗ってはいなかったのでした。
そんなことが、七日七晩続きました。
そのうち、黄祖の軍には疲労の色が見え始め、水上戦には欠かせない矢も不足しだしました。
8日目の夜のことでした。
また、襄陽の要塞には孫堅の軍船がやって来ます。
黄祖の兵は明らかに油断をしていました。
黄祖も矢を無駄にはできないと思い、攻撃命令を出すのを躊躇していました。
その時、孫堅の軍船から無数の人影が現れ、「かかれ!」と大喝したかと思うと軍船からは火矢が放たれ、疲労困憊と油断に包まれた黄祖の軍を大混乱に陥れたのでした。
この孫堅の奇計によって黄祖は大敗を喫し、要塞を制圧されてしまいます。
そして、自らは鄧城に逃げ帰ってしまうのでした。
翌日、劉表の将軍張虎と陳生を両翼に、黄祖が要塞奪回のために孫堅を攻めました。
孫堅出てこい!
卑怯な計略を用いおって。
今度は正々堂々、わしと手合わせせよ!
張虎が叫びます。
すると、馬を静かに歩ませ、孫堅の前に進み出る者がいました。
孫堅の将軍韓当(=字は義公。)です。
韓当は単騎で張虎の前に駆け出すと、「貴様ではご主君の相手は務まらぬわ!」と叫んで槍を繰り出します。
両者が槍を交えること三十余合。
張虎は何度も韓当の槍に貫かれそうになります。
これを見た陳生が慌てて張虎に加勢すると、さすがの韓当も危険な状態になりました。
孫堅の傍らに控えていた孫策は怒り、従者から弓箭を奪うや、思い切り矢をつがえて陳生に放ちます。
矢は見事陳生の眉間に突き刺さり、陳生は断末魔の声とともに落馬して果てたのでした。
張虎は戦慄を覚え、馬を返して逃げ出しますが、背後を韓当に襲われ、敢えなく斬り殺されてしまいました。
黄祖軍は一瞬のうちに二将を失い、兵は激しく動揺し、もはや戦どころではなくなってしまいました。
この様子を見た孫堅は全軍に突撃命令を発します。
黄祖は弓を捨て、馬を捨て、足軽に紛れてようやく鄧城に逃げ帰り、城門を固く閉ざしてしまうのでした。
連戦連勝。
孫堅は襄陽とは目と鼻の先にある漢水まで兵を進め、万が一に備えて漢江には黄蓋率いる水軍を待機させ、いよいよ劉表のいる襄陽攻略に乗り出すのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫堅 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 13 | 14 | 30 | 7 | |
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 26 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 29 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 35 | 36 | 52 | 29 |
190.2 | 董卓、都を長安に遷す。 | 29 | 9 | 35 | 35 | 36 | 52 | 29 |
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