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関羽、酒を預ける
董卓の将軍華雄の勇猛さは評判以上でした。
兪渉将軍と潘鳳将軍が相次いで華雄に斬られ、地鳴りを上げて歓声を上げる華雄の軍に、袁紹ら反董卓連合の諸侯たちは為す術がありませんでした。
そこに、ただならぬ雰囲気を漂わせた一人の偉丈夫が歩み出て来ました。
高希希監督『Three Kingdoms』の関羽
関羽です。
「何者だ?」と袁紹が尋ねると、関羽は長く美しい髭を左手でしごき、落ち着き払った様子で言いました。
私は主君劉玄徳(=「玄徳」は劉備の字。)に仕える馬弓手(=騎馬隊や弓隊を監督する伍長ほどの低い身分。)の関羽と申す。
あのような匹夫(=取るに足らない者。)に何を手こずっておられる。
すぐさま私が討ち取ってご覧に入れよう。
諸侯たちは失笑しました。
自らの寵臣である兪渉将軍がたやすく殺され、その心痛と恥辱とで心中穏やかでなかった袁紹は、関羽を怒鳴りつけました。
馬弓手ごときが、控えよ!
この上足軽を出陣させて討ち取られたとなれば、諸侯の中に良将なしと嘲りを受けるわ。
すかさず曹操が割って入り、袁紹に進言しました。
本初(=袁紹の字。)殿、この者の風貌をよくご覧なさい。
これはただものではない。
この威風堂々たる諸侯の面前で大言壮語をするからには、それなりの自負があるのでしょう。
迎え撃たせてみて、もし討ち取れないようでしたらその時に裁きを下しましょうぞ。
曹操はそう言うと、関羽のために酒を用意させ、「今日は冷える。景気付けに飲んで行かれよ」と熱い酒がなみなみと入った杯を手渡そうとしました。
いや、結構。
華雄めの首を討ち取った後に頂戴いたす。
孟徳(=曹操の字。)殿、それまでこの酒をお預かりください。
そう言うと、関羽は青龍偃月刀を引っ提げて歓声轟く華雄の軍に向かって出陣するのでした。
間もなく、陣屋の外から勝鬨(=勝利を宣言する掛け声。)が上がります。
諸侯たちは、「やはり口先だけの男であったか」と嘲笑し、早々に撤退するべきだと口々に唱えるでした。
しばらくすると、身の丈九尺(=208cm)の関羽が現れ、鞠のような黒い物体を諸侯の前に放り投げました。
のちに美髯公(=髭が長くて美しい偉丈夫。)と称えられる関羽は、長く整えられた髭にさわと触れながら「実検(=首が誰のものであるか検分すること。)願う」と言いました。
それは、紛れもなく華雄の首でした。
曹操はそう言うと、先ほど関羽のために注いだ酒を改めて関羽に与えました。
その酒からは、湯気がまだもうもうと立っていました。
これにより董卓軍は大いに乱れ、諸侯たちはようやく安堵の表情を浮かべるのでした。
その夜、曹操は曹仁に言いました。
奴は最初から華雄を斬る自信があったはずだ。
しかし、敢えて二将軍が華雄に斬られるまで待ったのだ。
自分たちの存在意義を高めるためにな。
何を狙っておるのか、油断ならぬ奴らよ。
曹操は人知れず、劉備ら三兄弟の野心を恐れるのでした。

人中に呂布あり、馬中に赤兎あり
董卓が反董卓連合掃討のために送った先陣は、華雄の死によって総崩れとなり、虎牢関に撤退を余儀なくされました。
「華雄敗れる」の報を聞いた董卓は怒り、内応を恐れて朝廷の文官であった袁紹の叔父の袁隗を家族もろとも殺害します。
そして、自ら20万の軍勢を擁し、当代無双の豪傑呂布や李傕、郭汜、参謀の李儒を従えて連合軍討伐のために出撃するのでした。
虎牢関に到着した董卓は、呂布に西涼(=涼州。董卓は元々涼州刺史(州の統括者)。記事下の地図参照。)の精兵3万を与え、袁紹らの本陣に向けて進軍させました。
高希希監督『Three Kingdoms』の呂布
呂布は名馬赤兎(=赤兎馬。日に千里を駆けると言われる汗血馬。)も小さく見えるような大男で、赤地の錦の上に鎧を着かさね、三叉に束ねられた頭髪の上には紫金冠を着けていました。
そして、獅子皮の帯に弓箭(=弓矢。)をかけ、手には大きな方天戟を引っ提げて徐々に本陣に迫ってきます。
十八鎮諸侯は各所に布陣し、呂布を迎え撃ちました。
最初に河内郡太守王匡配下の武将方悦が攻めますが、とても呂布の相手にはならず、赤子同然手玉に取られて斬り殺され、王匡の軍は敗走します。
そして、今度は上党太守張楊の家臣穆順という槍の名手が撃って出ますが、数合ともたずに、たちどころに呂布に斬られてしまいました。
次に北海の太守孔融の家臣で、重さ五十斤という鉄の槌を操る猛者武安国が呂布に挑みますが、こちらは数合で片腕を切り落とされ、慌てて逃げ帰る始末でした。
一難去ってまた一難。
反董卓連合の諸侯の間に、華雄に攻められた時以上の戦慄が走りました。
呂布は大喝しながら意気揚々と本陣に迫り、赤兎馬を縦横無尽に操り、そして方天戟を自由自在に振るってばったばったと連合軍の兵をなぎ倒していきます。
呂布が方天戟を一振りすれば、その度ごとに血飛沫を上げながら連合軍の兵士の首や腕が吹き飛ぶのでした。
人中に呂布あり、馬中に赤兎あり。
後世語り継がれるこの言葉は、まさにこの時生まれたのでした。
呂布を目にした兵士で、逃げない者は誰一人いません。
将軍でさえ逃げるものが多いので、兵士の統制は取れたものではありません。
本陣に迫る呂布の目に、公孫瓚の幟が見えました。
公孫瓚、出てこい!
その首、真っ二つに斬り裂いてくれようぞ!
公孫瓚は呂布を迎え撃ちますが、二、三合鉾を交えると、「これはたまらない」と駒を返して逃げ去りました。
口ほどにもない。
奴らは烏合の集か。
だれかこの呂奉先(=「奉先」は呂布の字。)と手合わせするものはおらぬのか?
呂布がそう叫ぶと、「はっはっはっ」と蛇矛を持って憚ることなく大笑する大男が立ち塞がります。
高希希監督『Three Kingdoms』の張飛
燕人張飛、ここにあり。
やい、呂布よ。
おれが相手だ!
劉備ら三兄弟は手勢が少なかったので、劉備と同じ盧植のもとで学んだ公孫瓚の軍に組み込まれていたのでした。
張飛は粗末な鎧を着ていたため、呂布には張飛の勇猛さが分かりません。
何者だ、貴様は?
足軽に用はない!
呂布の方天戟が張飛に襲いかかります。
しかし、張飛はそれを素早く交わし、逆に蛇矛を巧みに操って赤兎馬の立て髪をかすめます。
呂布の方天戟と張飛の蛇矛が小気味よくぶつかり合う音が戦場に響きます。
いつしか彼らの周りには敵味方が集まり、両英雄の鉾捌きにしばし時を忘れて見入るのでした。
十合二十合と手数が増すうちに、「こやつ、なかなかやりおる」と呂布は舌を巻きました。
張飛もまた「これは噂以上だ」と、らしからぬ驚嘆の弁を漏らすのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫堅 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 13 | 14 | 30 | 7 | |
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 26 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 29 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 35 | 36 | 52 | 29 |
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