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江東の虎孫堅
初平元(190)年、数十万の兵に膨れ上がった反董卓連合軍は、董卓が専横を極める都洛陽(=現在の河南省西部。司隷(司州)東部。漢の都があった。記事下の地図参照。)の東に陣を構えました。
代々漢の三公(=司徒(行政の長)、太尉(軍事の長。もとは「司馬」と言った)、司空(政策立案の長)の三つの役職で、常設の官では最高位。)を務めた名門の出で、諸侯に反董卓の檄を飛ばした袁紹が総指揮を司り、その弟の袁術が兵糧の管理をすることになりました。
また、献帝の勅書を奉じて参上した曹操が作戦参謀の任に就きました。
「誰か虎牢関の董卓軍を蹴散らすものはないか?」と、袁紹は諸侯に問いました。
虎牢関には董卓軍きっての勇将、驍騎校尉華雄と、丁原に仕えていた呂布を寝返らせた知謀の人李粛が派遣されていました。
その昔、周の穆王がこの地で虎を飼っていたことから、「虎牢」の名がついたと言われています。
ちなみに、董卓には参謀として李儒がおり、また一騎当千の武将として呂布、李傕、郭汜、華雄が仕えていました。
董卓が治めていた西涼(=現在の甘粛省。涼州。)は戦には欠かせない駿馬の産地で、また董卓は度重なる羌族との戦闘によって鍛え上げられた精兵を有していました。
満を持して参集した十八鎮諸侯といえども、意気盛んな西涼兵に先陣きって当たるのは避けたいというのが本音でした。
そこに、すかさず「私が先陣を務めましょう」と名乗りを上げたものがいました。
長沙(=現在の湖南省の省都。荊州中南部。)の太守孫堅です。
高希希監督『Three Kingdoms』の孫堅
孫堅といえば、かつて呉の国が存在していた江東(=長江下流域。)の豪族で、孫氏の兵法を著した孫武の子孫です。
17歳のとき、孫堅は父に連れられて、海賊が横行していた銭塘地方(=現在の浙江省。揚州東部。)に旅をしたことがありました。
日の暮れも迫った頃、孫堅が父と浜辺を歩いていると、海賊たちが交易船の荷を略奪して、山分けしているところに出くわしました。
すると孫堅は恐れも知らず抜刀して駆け出し、海賊の棟梁を一刀両断に斬り捨てて大喝すると、賊は尽く四散したのでした。
略奪された積荷の中には財宝が含まれていましたが、孫堅はそれらに手をつけることは一切なく、全て被害者のもとに返しました。
また、少しの礼も受け取らなかったのです。
このことで、「江東に虎あり」と孫堅の名声は著しく高まったのでした。
その命知らずの戦上手は、宛城(=現在の河南省南陽市にある。荊州北部。)での黄巾賊との戦いでも天下に知れ渡っていました。
そのため、孫堅は満場一致で虎牢関攻略の先鋒に選出されたのでした。

開戦、虎牢関の戦い
先鋒には孫堅が、そしてその後詰として兗州済北の相で、袁紹より行破虜将軍に任命されていた鮑信が待機していました。
鮑信は、董卓が洛陽に入城した際、その専横を予見して袁紹に董卓殺害を進言した人物でした。
決断を渋る袁紹に見切りをつけて故郷に戻り、兵を募って旗揚げの機会をうかがっていのでした。
血気にはやる鮑信は弟の鮑忠と謀って抜け駆けし、3千の兵で虎牢関に奇襲をかけました。
しかし、勇将華雄の手にかかって鮑忠は討死してしまいます。
高希希監督『Three Kingdoms』の華雄
華雄は即刻鮑忠の首を洛陽に送り、董卓は大いに喜んで華雄を都督に任じ、褒美を与えたのでした。
出鼻を挫かれた孫堅軍でしたが、虎牢関攻略に向けて出陣します。
華雄軍の副将胡軫は5千の兵で孫堅を迎え撃ちますが、孫堅の重臣程普の投じた槍に貫かれて死んでしまいました。
その機に乗じて孫堅は虎牢関を落とそうとしますが、投石や矢の雨を浴びて兵の損害はおびただしく、やむなく後方に退きました。
一進一退の攻防。
長期戦を覚悟した孫堅は、胡軫の首を袁紹に送るとともに兵糧を催促しました。
「おお、さすがは孫堅!」と、直ちに兵糧を手配しようとする袁紹の耳元に、何事か囁く者がいました。
ご主君。
孫堅は江東の虎でございます。
孫堅が洛陽の董卓を討ち取れば、今度は狼が殺されて虎がのさばるだけのこと。
このまま孫堅を勝たせては、後の憂いとなりましょう。
いまは孫堅と董卓の兵を消耗させ、後にご主君が洛陽に攻め上がるのです。
そして、献帝の後ろ盾となって天下に号令を下すのです。
兼ねてより、袁紹には董卓討伐後の心算がありました。
兵を募っていた曹操に先を越されてはならぬと、いち早く諸侯に董卓討伐の檄を飛ばしたのも、天下に覇を唱えるイニシアチブを取るためでした。
「ううむ・・・」と腕組みした袁紹は、結局孫堅に兵糧を送らなかったのです。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫堅 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 13 | 14 | 30 | 7 | |
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 26 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 29 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 35 | 36 | 52 | 29 |
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