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劉備三兄弟、再び立つ
十数万の兵にのぼる反董卓連合軍は袁紹を盟主として、洛陽(=現在の河南省西部。司隷(司州)東部。漢の都があった。記事下の地図参照。)の東に陣を構えました。
幕末の戊辰戦争において、新政府軍は天皇家の御紋である菊の章旗(=錦の御旗)を掲げて官軍の証とし、薩長土肥など各藩の結束は強固なものとなって兵士の士気は大いに高まりました。
これによって幕府軍は朝敵となり、新政府軍は破竹の勢いで進軍したのでした。
曹操が持ち込んだ献帝の勅書は、まさにその錦の御旗の役割を果たし、反董卓連合は朝敵の汚名を回避することになりました。
その頃、この連合軍の本営に向かって馬を駆る3人の武士がいました。
一人は、見事な髭を風になびかせた身の丈九尺(=208cm)の偉丈夫で、まるで弦月のように大きな刃を持つ青龍偃月刀を片手にしていました。
高希希監督『Three Kingdoms』の関羽
またもう一人は、鬼神も恐れるような荒々しい風貌の巨漢で、重さ90斤(=54kg)、長さ一丈八尺(=5m超)の蛇矛を引っ提げていました。
高希希監督『Three Kingdoms』の張飛
そして、その二人を従えて先頭を駆ける男は、たやすくは感情を推し量ることができない落ち着き払った眼光の持ち主で、どことなく人を惹きつける天子(=皇帝。)の気を身にまとっていました。
高希希監督『Three Kingdoms』の劉備
大鵬は一度飛び立てば万里を天翔る。
それは、まるで一羽の鳳が羽根を羽ばたかせて飛翔するかのような行軍でした。
劉備、関羽、張飛の三兄弟です。
張飛は嘆息しながら言いました。
劉備三兄弟は以前、頴川(=現在の河南省中部。豫洲西部。)で黄巾賊の襲撃を受けて敗走していた官軍の将である董卓を助けたことがありました。
助けたにもかかわらず、無礼な対応に終始した董卓を、張飛は斬って捨てようとして劉備たちに阻止されたことがあったのでした。
そうだな、張飛。
お前には先見の明があるな。
関羽は微笑しながら張飛に答えると、今度は劉備に尋ねました。
兄上、我々には少しの手勢しかおりません。
袁紹たちが我らを相手にするでしょうか?
関羽の指摘はもっともでした。
黄巾賊との戦いでは、劉備三兄弟は数々の戦功を挙げましたが、結局は何の爵位も持たない義軍ということで、旗揚げから終戦後まで一貫して見下される存在でした。
相手にはしないであろうな。
だが、あの戦いで我らは学んだ。
もう誰の下にもつかぬ。
誰の指図も受けぬ。
我らの目的は、偏に天子をお救いすることである。
そのためにのみ、我らは正しいと思う行動をする。
私は漢の景帝の末孫。
たとえ爵位を持たずとも、諸侯と我らは斉しく対等なのだ。

劉備、反董卓連合に加入する
衛兵が伝えると、袁紹は「はて?」と言って首を傾げました。
そう考えても、目ぼしい人物の名は思いつきません。
「名は何と申していたか?」と、袁紹は尋ねます。
曹操は、「劉備、どこかで聞いたことがある名だな」と腕を組みました。
袁紹はやや苛立ちながら。
「劉備」など聞いたことがないぞ。
力のない者に用はない。
足手まといは要らぬからと、さっさと追い返せ。
すぐに曹操が遮ります。
本初(=袁紹の字。)殿、それはなりません。
私と本初殿は、実際に董卓軍の恐ろしさを知っている身。
いまは、味方は多いに越したことはありません。
それに、わざわざ参集した者を追い返していては、これから我らに与する者は現れなくなる恐れがあります。
袁紹は「分かった、ではここに連れて参れ。会うだけは会おうぞ」と渋々了承したのでした。
劉備三兄弟が現れると、諸侯の間より失笑が漏れました。
しかし、その中に「玄徳(=劉備の字。)殿か!」と言う者がありました。
長沙の太守孫堅です。
袁紹殿、かの黄巾賊の戦の折、私は朱儁将軍のもとで劉備殿とは力を合わせて戦かったことがございます。
誠に知謀に優れる将軍です。
そういうや否や、曹操も思い出したように言いました。
ああ、あの劉備殿か。
本初殿、この者は黄巾賊討伐では数々の戦功を挙げた戦巧者です。
続いて公孫瓚も、「玄徳殿とは中郎将盧植将軍のもとで共に儒学と兵法を学んだ同輩で、その知略は群を抜いておりました」と述べました。
袁紹はまだ疑わしいといった具合に、「劉備とか申したな。官職は?」と、尋問するように劉備に尋ねます。
再び失笑が起こります。
劉備は粛々と答えます。
はい、故郷涿県では筵を織っておりました。
しかし、もとを辿れば漢の景帝の子、中山靖王劉勝の末裔。
漢の皇帝の末孫です。
一同が驚きました。
袁紹は立腹して、皇孫を名乗る不遜を咎めます。
なぜそんな高貴な身分の者が筵を織るのだ。
いい加減なことを述べおって。
簒奪(=無理やり帝位を奪うこと。)を目論む気か?
「本初殿」と、再び曹操が割って入ります。
漢の皇叔であれば、先日の勅書と同じく我ら連合軍の大義名分が立ちます。
その実力は孫堅殿、公孫瓚殿、そしてこの曹操も認めるところです。
お願い致す。
劉備殿を第19鎮諸侯にお加えください。
こうして、劉備は反董卓連合軍に迎え入れられることになったのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫堅 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 13 | 14 | 30 | 7 | |
181 | 何氏が霊帝の皇后となる。 | 20 | 26 | 26 | 27 | 43 | 20 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 29 | 30 | 46 | 23 |
189.5 | 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
189.9 | 少帝が廃位され、献帝が即位する。 | 28 | 8 | 34 | 34 | 35 | 51 | 28 |
190.1 | 反董卓連合軍が結成される。 | 29 | 9 | 35 | 35 | 36 | 52 | 29 |
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