【1日5分】あらすじ三国志18「我人に背くとも、人我に背かせじ」|大泉洋主演『新解釈・三國志』応援企画!

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三国志
大学で中国文学を学び、長年国語の教員を勤めてきた経験を活かして、分かりやすく、簡潔に、それでいて深イイ三国志のあらすじ紹介を行っていきたいと思います! 『三国志』に興味はあるけど小説を読んだりドラマを見たりする時間はない、でも簡単なあらすじだけではもの足りない・・・。 そんな方にはぴったりです!

 

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父の親友呂伯奢を頼る

董卓とうたく暗殺に失敗し、都洛陽らくよう(=現在の河南省西部。司隷(司州)東部。記事下の地図参照。)を命からがら脱出した曹操そうそうは、父の住む陳留ちんりゅう(=現在の河南省開封の東南。兗州南部。)に向かっていました。

 

曹家は名門。

 

その威名を頼りにして将兵を募り、再び董卓に挑む心づもりでした。

 

途中、中牟ちゅうぼう県の門兵に捕縛されますが、県令の陳宮ちんきゅうに救われ、志を同じくする陳宮と共に反董卓・漢再興を誓い、共に逃避行を続けるのでした。

 

休むことなく駒を進め、中牟県と陳留のちょうど中間地点まで来た時、日の暮れも迫っていました。

 

公台こうだい(=陳宮のあざな。)よ、ここはどの辺だ?

 

曹操が尋ねると、当地に詳しい陳宮は「先ほど成皋路せいこうじの辺りを通り過ぎましたので、恐らくは成皋県に入ったものと思われます」と言った。

 

公台よ、いよいよ天はおれに味方しているぞ。

成皋県には、父の義兄弟とも言える古くからの親友、呂伯奢りょしゅくしゃが住んでいる。

今晩はそこに厄介やっかいになろう。

 

曹操と陳宮が呂伯奢の家の前で取り次ぎを頼むと、呂伯奢は「孟徳もうとく(=曹操の字。)か?本当に孟徳なのか?」と血相けっそうを変えて出てきました。

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孟徳よ、いまやお前の人相書き(=似顔絵。)が至る所に貼られていて、お前を捕らえたものには黄金千金が与えられるとあるぞ。

一体、何をしたのだ?

 

曹操は嘆息たんそくしながら答えました。

 

いまや都では少帝しょうてい何太后かたいごうが害され、成り上がりの董卓が献帝けんていを操り人形にして国政を牛耳ぎゅうじっています。

遅かれ早かれ董卓は帝位を簒奪さんだつ(=無理やり帝位を奪うこと。)するつもりでしょう。

ご存知の通り、私は漢にゆかりある曹家の末孫ばっそん

見て見ぬ振りもできず、董卓を暗殺しようと試みましたが失敗し、いまはこうして追手を避けつつ、陳留に向かって逃避行を続けているのです。

 

呂伯奢は「なるほど、そうであったか」と言って曹操の手を握りしめました。

 

そして、今度は陳宮の方を見て、「このお方は?」と尋ねます。

 

この者は陳宮と言って、私の恩人です。

もとは中牟県の県令で、私の志に共鳴して今は行動を共にしております。

 

呂伯奢はひざまずき、今度は陳宮の手を取って「孟徳が世話になりました、どうかこれからもこの者を導いてやってください」と涙を流すのでした。

 

今日は飲もう。

我が屋敷に泊まるがよい。

水くさいことは言うでないぞ。

わしはこれから美味い酒をあがないに行く。

貴公らはしばらくここで休んでいてくれ。

 

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我人に背くとも、人我に背かせじ

まるで我が子に相対あいたいするような呂伯奢の歓待に、生死の境をくぐり抜けてきた2人は久しぶりの安堵あんどを覚えました。

 

そして、曹操と陳宮は逃避行の疲れからか、いつの間にか客間で眠ってしまっていました。

 

とは言え、2人は恩賞をかけられたお尋ね者。

 

いつ何時なんどき捕らえられるか分かりません。

 

そのために眠りは非常に浅く、うつらうつらを繰り返す状態でした。

 

すると、何やら外から「縛れ」とか「殺せ」と言う声が聞こえてきます。

 

陳宮が曹操の方を見ると、すでに曹操は耳をそば立ててその声のする方をにらみつけていました。

 

そうかと思うと、今度は刀物をぐ音がしてきます。

 

「呂伯奢め、我らを捕らえて千金を得る気か?」と曹操は言いました。

 

刀を研ぐ音が止むと、やがて2人が休息をしている室の扉の前に人影がさしました。

 

曹操は陳宮に目配せをして、静かに抜刀ばっとうするやいなや、一気に扉を蹴倒し、そこに立っていた呂伯奢の従者を殺してしまいました。

 

そして、その勢いのまま外に飛び出すと、呂伯奢の家族や従者8人をことごとく皆殺にしてしまいました。

 

辺りは一面、血の海です。

 

静けさを取り戻した呂家の中庭には、けものうめく声がします。

 

その呻き声のする方に行ってみると、縛られたいのししが一頭、くりやの天井から吊るされた状態で時折鼻息荒くあらがうのでした。

 

側には猪を煮るための鍋に火がかけられ、湯気がもうもうと立っていました。

 

しまった!

全くの勘違いでした。

孟徳殿、我らはとんでもないことをしてしまいました。

 

陳宮は顔色を失い、血のしたたる刀を厨の床に投げつけました。

 

曹操はおもむろに外に出て、自分たちが惨殺ざんさつした者たちの死骸を眺めていました。

 

しばらくして刀をさやに収めると、曹操は「公台、行くぞ」と言いました。

 

行くぞ?

あれだけ歓待してくれた呂伯奢の家族を皆殺しにしたのですぞ。

呂伯奢には釈明なさらぬのですか?

 

曹操は淡々と答えます。

 

説明して理解されるとは思えない。

釈明して何とかなる性質のものではない。

おれならとても許さないだろう。

だから、何も言わずに去る。

 

陳宮はふんといきどおりをあらわにしてそっぽを向き、曹操の後を無言でついていくのみでした。

 

呂伯奢の屋敷を去ってからしばらくすると、「おーい」と言う声が聞こえました。

 

紛れもなく、呂伯奢の声です。

 

孟徳よ、見よ!

美味うまい酒を求めてきたぞ。

今日は夜が更けるまで飲み明かそうぞ。

 

曹操は多少引きつった顔で、「実は途中に寄った茶屋で忘れ物をしてきたので、それを取りに行きます」と呂伯奢に告げました。

 

「そうか、では早く戻るのだぞ」と言って、呂伯奢は詩をぎんじながら、家族が惨殺されたとも知らずに屋敷に戻って行くのでした。

 

2人は呂伯奢の背中をいつまでも見送っていました。

 

すると、曹操は何かを思いついたように、「公台よ、しばしここで待て」と言って呂伯奢の後を追って行きました。

 

間もなくして戻ってきた曹操は、「呂伯奢を殺してきたよ」と静かに言いました。

 

なんですと?

なぜ彼を殺す必要があるのですか?

 

曹操は「考えてもみよ」と、今度は強い口調で答えました。

 

もし呂伯奢が家族や使用人たちの死体を見たら、いくら父の義兄弟と言えども、私に対する恨みは骨髄こつずいてっするだろう。

董卓を殺す前に、また敵を抱えることになる。

それでは面白くない。

われひとに背くとも、ひとわれに背かせじ」(=私が人を裏切ることがあっても、人に裏切られることなど絶対にさせない。)だ。

 

陳宮は「しまった」と、思わず天を仰ぎました。

 

そして、「付き従う人間を誤った」と、ひどく後悔をするのでした。

 

曹操と陳宮は呂伯奢の家に戻り、夜を明かすことにしました。

 

そして、曹操は、呂伯奢の従者が研いでいた刀を用いて猪を刻み、鍋で煮て食いました。

 

陳宮は一口も食べることができませんでした。

 

深夜、陳宮は曹操が寝息を立てているのを確かめると、そっと刀を抜き、曹操の喉もとに刃先を突き立てます。

 

そして、自問自答するのでした。

 

陳宮よ、何を悩む必要がある。

曹操こやつの目的は漢を再興し、この乱世から万民を救うことではない。

自分の野心に突き動かされているだけに過ぎない。

なるほど、董卓を倒すにはこの男の野望と大胆さは必要になるだろう。

しかし、この男の力を借りて董卓を倒したところで、曹操こやつが新たな董卓になるだけではないか。

この男の野心のために、この先どれだけ多くの人の命が奪われていくことだろう。

 

陳宮はそう考えながら、曹操を殺すことを自分に強いるのですが、なかなか刃先は動きません。

 

しかし、天はこの男を生かした。

私が殺すのは、その天意に背くことになりはしないか。

・・・仕方ない、私は別の道を歩もう。

 

陳宮は渾身こんしんの力で刀を曹操の首のすぐ横に突き立て、曹操とたもとかつことを決断するのでした。

 

陳宮の去った室の中では、陳宮の刀に照り返された青白い月の光が曹操の鳳眼ほうがんに注がれます。

 

なぜ殺さない?

そのようなことだから、結局は何も成し遂げられないのだ。

そのような覚悟しかできない者たちばかりだから、この乱世は終わらないのだ。

公台よ、おれがそなたなら、間違いなく曹操を殺すぞ。

 

曹操は再び目を閉じ、明日の逃避行のために眠りに就くのでした。

 

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西暦 出来事 年齢
劉備 孔明 曹操 孫堅 袁紹 董卓 呂布
前202 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。
前157 景帝が漢の皇帝に即位する。
168 霊帝が漢の皇帝に即位する。 7 13 13 14 30 7
181 何氏が霊帝の皇后となる。 20 26 26 27 43 20
184 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 23 3 29 29 30 46 23
189.5 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 28 8 34 34 35 51 28
189.9 少帝が廃位され、献帝が即位する。 28 8 34 34 35 51 28

 

以上のあらすじは、主に吉川英治よしかわえいじ『三国志』、陳舜臣ちんしゅんしん『秘本三国志』『小説十八史略』、横山光輝よこやまみつてる『三国志』、王扶林監督『三国志演義』、高希希監督『Three Kingdoms』などをベースにしています。そのため、羅貫中らかんちゅうの『三国志演義』や陳寿ちんじゅの『正史三国志』とは内容が異なり、少なからず脚色が含まれることがあります。あらかじめ、ご了承下さい。

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