【1日5分】あらすじ三国志15「王允の嘆き」|大泉洋主演『新解釈・三國志』応援企画!

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三国志
大学で中国文学を学び、長年国語の教員を勤めてきた経験を活かして、分かりやすく、簡潔に、それでいて深イイ三国志のあらすじ紹介を行っていきたいと思います! 『三国志』に興味はあるけど小説を読んだりドラマを見たりする時間はない、でも簡単なあらすじだけではもの足りない・・・。 そんな方にはぴったりです!

 

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王允の嘆き

ああ、蒼天そうてんよ!

先帝せんていよ!

この不忠者の王允おういんをおゆるしください!

 

司徒しと(=三公さんこう(司徒・司空しくう太尉たいい司馬しば)など常設の官では最高位)の一つ。行政を司る長。)王允おういんは私邸に帰ると従者を遠ざけ、自分の部屋にこもってひざまずき、漢の歴代皇帝の御霊みたまに謝罪したのでした。

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董卓とうたくの横暴によって少帝は廃されて弘農王こうのうおうに格下げとなり、のみならず董卓の参謀李儒りじゅの手に掛かって何太后かたいごう(=弘農王(劉弁)の生母。)と共に凄惨せいさん最期さいごを遂げていました。

 

李儒は幽閉されていたこの母子のもとを訪ね、「董卓相国しょうこく(=「相国」は、現在の日本で言えば内閣総理大臣。)からの贈り物でございます」と言って酒を献上しました。

 

李儒よ、それは毒杯であろう?

違うと言うなら、まずはお前が飲んでみせなさい。

 

何太后がそうと言うと、李儒は舌打ちを一つして、今度は短刀をささげ持ちながら、「では、こちらの方がお好みですかな?」と言って2人に詰め寄ります。

 

必死の抵抗もむなしく、最後には楼台ろうだいの上から2人は突き落とされ、ここに何氏かしは滅んだのでした。

 

その知らせが王允のもとにもたらされ、今日は殊更ことさら、王允は自らの非力さに胸を痛めているのでした。

 

お父上。お父上。

 

うら若い女性の声がします。

 

それは、16歳になる王允の養女貂蟬ちょうせんでした。

 

貂蟬よ。

わしは袁紹えんしょう饗宴きょうえんで董卓を批判して罵倒ばとうされた時も、義憤ぎふんを抱え、匕首あいくちで董卓を襲撃した者が殺された時も、あやつめに何もものを申すことが出来なかった。

そして、少帝は廃され、ついにはけだものの李儒によって殺害されてしまった。

先帝に会わせる顔がない。

自分が恥ずかしくて仕方がないのだ。

 

「お父上のせいではございません」と、貂蟬は王允の背中をさすります。

 

お父上のせいではありません。

義憤に駆られて諫言かんげん(=目上の者の誤りを指摘して改善を促すこと。)なさいましても、無駄に命を散らすだけでございます。

それよりは堪えて、情勢を覆す機会をうかがう道を選択なさったお父上の判断は正しかったのです。

お父上は過去に、十常侍じゅうじょうじ張譲ちょうじょう黄巾賊こうきんぞくが裏では繋がりを持っていたことをあばき、十常侍に恨まれることを承知で霊帝れいていに密告した勇気の持ち主です。

いずれ道は開けましょう。

どうかお元気になられて、決起の日に備えてお食事をおりください。

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高希希監督『Three Kingdoms』の貂蝉

 

王允は貂蟬を養女とすると、多種多様な芸道を習わせ、古今の学問を修めさせました。

 

まさに溺愛という言葉が相応ふさわしい接し方でした。

 

その才は、王允の息子たちよりも遥に優れていました。

 

この貂蟬は後に大漢を救うことになるのですが、それはまだまだ後の話です。

 

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王允、反董卓を密議する

ある日、相国である董卓が朝議に姿を現さず、のみならず李儒や呂布りょふなど董卓に近しい者も参内さんだいしませんでした。

 

王允はこれを千載一遇の好機と考え、以前から気の置けない間柄であった官吏たちを、自分の誕生を祝う祝賀に招待します。

 

えんもたけなわになった頃、王允はそでを振って合図を送ります。

 

すると、従者は扉を固く閉ざし、王允と官吏たちだけの密室の状態となりました。

 

王允はさめざめと泣いています。

 

官吏の1人が尋ねました。

 

王司徒、本日はお誕生を祝う席であるのに、何故なにゆえお泣きになるのですか?

 

王允は意を決したように言いました。

 

今日は私の誕生日などではない。

今日は、私が信頼する者たちだけにお越しいただいた。

 

人々が顔を見合わせます。

 

王允は涙を袖でぬぐい、今度は参集した面々を見渡しながら話し始めました。

 

集まってもらったのは他でもない。

董卓は洛陽らくように入るや、少帝を廃位し、自ら相国となって専横を極めておる。

このままでは、奴が帝位を簒奪さんだつ(=帝位を無理矢理奪うこと。)することもあり得る。

まさに危急存亡のときである。

我々の一族は代々漢のろくみ、大漢に報いなければならない身分だ。

さぞやいきどおりを抱えていることと思う。

いかにすればこの状態を打破できるか、今日は忌憚きたんなく話し合いたいと思う。

 

沈黙が宴席を包みます。

 

官吏の誰しもが董卓の恐ろしさを熟知しています。

 

それに、王允の邸宅と言えども、滅多なことを言えばすぐに密告され、いつ首を落とされてもおかしくはありません。

 

実際、董卓への不平不満を口にした者が密告され、反逆の汚名を着せられて投獄される事件も起きていました。

 

朝廷の文武百官はみな疑心暗鬼になっていたのです。

 

王允は静まり返った官吏の様子を見渡して涙を流し、例のように「おぉ、先帝よ!」と漢の祖廟そびょうに向かって平伏するのでした。

 

すると、どこからか高笑いをする声が聞こえて来ました。

 

一同は騒然とします。

 

王允は強い口調で「誰だ?」と尋ねます。

 

その者は笑ったまま返答をしません。

 

王允はさっきまで泣いていたのが嘘のように、顔を紅潮こうちょうさせて怒鳴りつけます。

 

誰だ、笑っておるのは?

返答次第ではゆるしはせぬぞ!

 

笑い声を上げている人物は「これは失礼」と言って、それでもまだ笑いをこらえきれない様子でいるのでした。(第16回に続く)

 

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西暦 出来事 年齢
劉備 孔明 曹操 孫堅 袁紹 董卓 呂布
前202 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。
前157 景帝が漢の皇帝に即位する。
168 霊帝が漢の皇帝に即位する。 7 13 13 14 30 7
181 何氏が霊帝の皇后となる。 20 26 26 27 43 20
184 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 23 3 29 29 30 46 23
189.5 霊帝が崩御し、少帝が即位する。 28 8 34 34 35 51 28
189.9 少帝が廃位され、献帝が即位する。 28 8 34 34 35 51 28

 

以上のあらすじは、主に吉川英治よしかわえいじ『三国志』、陳舜臣ちんしゅんしん『秘本三国志』『小説十八史略』、横山光輝よこやまみつてる『三国志』、王扶林監督『三国志演義』、高希希監督『Three Kingdoms』などをベースにしています。そのため、羅貫中らかんちゅうの『三国志演義』や陳寿ちんじゅの『正史三国志』とは内容が異なり、少なからず脚色が含まれることがあります。あらかじめ、ご了承下さい。

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