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宦官十常侍の専横
古代中国には、宦官と呼ばれる官職がありました。
王宮は皇帝の住まうところです。
そして、そこには当然皇帝の妃たちも住まうことになります。
秦の始皇帝の時代には3千人の宮女が伺候していたと言われています。
臣下が頻繁に王宮に参内すると、万が一にも宮女と密通(=密かに肉体関係を持つこと。)する者や、皇帝を暗殺しようと企む者が出てくる可能性があります。
従って、王宮への臣下(=男。)の出入りは極力避けたいのが本音です。
しかし、すぐに臣下と連絡が取れないのも不都合です。
そこで生まれたのが「宦官」という役職でした。
宦官には、男性としての力を削ぎ、宮女たちと過ちを犯せないようにするために、ある処置がなされていました。
その処置とは、男性の生殖器を取り除くことでした。
手術には大変な激痛が伴いますが、自ら希望して宦官になるものもいました。
なぜなら、宦官になれば始終皇帝の側近くに仕えることができ、皇帝から寵愛されることがよくあるため、立身出世の近道になるからです。
秦の始皇帝に寵愛された宦官の趙高は、始皇帝没後、第2代皇帝の胡亥に「馬を献上します」と言って鹿を贈ります。
そして、「それは馬ではなく鹿だ」と趙高を批判した者たちを、次々に殺害しました。
「馬鹿」という言葉の由来ですが、そんなことがまかり通るくらい、宦官趙高は権力を手中に収めました。
高希希監督『項羽と劉邦 King’s War』の趙高
また、黄巾賊討伐で抜群の功績を挙げた曹操は、祖父(=曹操の父、曹嵩の養父。)曹騰がこの宦官で、皇帝からの信頼が厚い人物でした。
曹操が活躍できたバックボーンには、祖父である曹騰の存在も一役買っていたのです。
漢の霊帝は12歳で即位し、政務を行う力を十全には持っていませんでした。
そのため、その職務は常に霊帝に近侍した十数人の宦官(=中常侍。)が取り仕切っていました。
これを、人々は「十常侍」と言ったのです。
中でも、特に霊帝から寵愛されたのは張譲と趙忠で、霊帝からは父母のごとく扱われていました。
大した功を持たない朱儁や皇甫嵩などが黄巾討伐から凱旋するや格別な恩賞を賜ったり、多くの戦功を挙げた劉備がいつまで経っても都洛陽城外(=現在の河南省西部。司隷(=司州)。記事下の地図参照。)に留め置かれたりしたのは、この十常侍の意向によるものだったのです。
そこには、賄賂が絡んでいました。
凱旋するなり十常侍に賄賂を贈るものはすぐさま昇進しました。
また、賄賂を贈らない者でも、あとで見返りを請求できそうな財力のある人物に対しては、十常侍は積極的に昇進させたのでした。
劉備のような爵位も財力も持たない人間が洛陽城外に留め置かれるのは、だから至極当然の流れだったのです。
政治の中枢がこうも汚濁に塗れているわけですので、世の中が乱れ、黄巾賊が蔓延ったのは当然でした。
いくら賊を鎮圧しても、諸悪の根源が正されないわけですので、各地では不満が巻き起こり、反乱が頻発していました。
劉備とともに、黄巾賊が立て籠る宛城の攻略に当たっていた孫堅は、凱旋して間もなく、静養する暇もなく涼州で反乱を起こした辺章・韓遂の討伐に急行していたくらいです。

何氏の台頭
人口の多い洛陽の中でも、絶世の美女と評判になった者がいました。
その女性は何氏と言いました。
何氏は入内(=皇帝の妃として王宮に入ること。)するや、十常侍ら宦官を買収して貴人(=宮女の官職名。)となり、ついには霊帝に寵愛されて皇后となりました。
間もなく皇子劉弁が生まれ、異母兄の何進は大将軍となるなど、何氏一族の力は増大していきました。
霊帝には、王美人(=「美人」は宮女の官職名。)という妃もいました。
そして、2人の間には劉協という皇子が生まれていましたが、そのことが何皇后の嫉妬心に火をつけます。
その結果、何皇后は王美人を殺害してしまったのでした。
何氏は、当然劉弁に皇位を継がせたいと考えていました。
しかし、王美人が殺害されたことにより、霊帝は劉協を不憫に思うようになりました。
のみならず、帝王の才覚を有しているのは誰が見ても劉協の方であり、いつしか霊帝は劉協に皇位を譲りたいと考えるようになったのです。
このことが、のちに漢王朝の命運を揺るがす大事件の発端となるのでした。
西暦 | 出来事 | 年齢 | ||||||
劉備 | 孔明 | 曹操 | 孫堅 | 袁紹 | 董卓 | 呂布 | ||
前202 | 劉邦が項羽を滅ぼす。漢王朝誕生。 | |||||||
前157 | 景帝が漢の皇帝に即位する。 | |||||||
168 | 霊帝が漢の皇帝に即位する。 | 7 | 13 | 13 | 14 | 30 | 7 | |
184 | 黄巾の乱が起こるも、同年鎮圧。 | 23 | 3 | 29 | 29 | 30 | 46 | 23 |
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