今日のポイント
用言の活用⑬
「下二段活用」
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「下二段活用」
下二段活用の見分け方
以前の解説で、用言の活用の種類をマスターするには、まず動詞の数が極めて少ない活用の種類(上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用、ナ行変格活用、ラ行変格活用)、いわゆる「覚えるシリーズ」からマスターするべきだとお伝えしました。
「覚えるシリーズ」の動詞は全部で40個程度になりますが、これらの動詞を見た瞬間、それがどの活用の種類に属しているのか、そしてどのように活用(変化)するのか、すらすら言えるようになるまで記憶に定着させてください。
そして、「覚えるシリーズ」に属する動詞以外の動詞が出てきたら、その動詞は四段か、下二段か、上二段のどれかであるので、その動詞に「ず」、または「ない」をつけて、未然形の音を確かめます。
*動詞に「ず」、または「ない」をつけると然形になります
その時、未然形の音が「e」だった場合、下二段活用ということになります。
例えば、「捨つ」という動詞は、覚えるシリーズにはありませんので、四段か、下二か、上二です。
「ず」を付けると「捨てず」となります。
ローマ字で表せば「捨te+ず」となり、未然形が「e」の音と分かりますので下二段活用です。
下二段活用は覚えるシリーズではありませんが、以下の動詞を見たときはすぐに下二段だと判断できるものですので、頭に入れておいてください。
いずれも入試頻出ですよ!
一目で判断!下二段活用の動詞
①漢字一字の下二段活用の動詞
「得」(現代の「得る」)、「寝」(現代の「寝る」)、「経」(現代の「経る」)
*活用(変化)しない部分のことを語幹と言いますが、上記の動詞はすべての部分を活用に使う(すべての部分を活用表に記入する)ので、カ変「来」やサ変「す」、下一「蹴る」と同じく語幹はありません。 語幹の欄には、「〇」、または「×」を記入してください。
②ア行下二段の動詞は3つのみ 「得」(現代の「得る」)、「心得」(現代の「心得る」(納得する・了解する))、「所得」(それなりの地位を得る) *上記①「得」の活用表を参照。
③ヤ行下二段の動詞は十数個程度しかない 「見ゆ」(現代の「見える」)、「覚ゆ」(現代の「覚える」)、「聞こゆ」(現代の「聞こえる」)、「越ゆ」(現代の「越える」)、「消ゆ」(現代の「消える」)、「燃ゆ」(現代の「燃える」)、「絶ゆ」(現代の「絶える」)、「肥ゆ」(現代の「肥える」)、「栄ゆ」(現代の「栄える」)など *「ゆ」は上代(奈良時代以前)の助動詞で、可能や自発などの意味があるため、「~える」という訳になります。
④ワ行下二段の動詞は3つのみ ○「植う」、「飢う」、「据う」
*ヤ行とは「や・い・ゆ・え・よ」で、ワ行とは「わ・ゐ・う・え・を」を指します。 そのため、ヤ行下二段では「え」と「ゆ」を、ワ行下二段では「ゑ」と「う」を用います。 |
下二段の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形
ず |
連用形
て |
終止形
。 |
連体形
とき |
已然形
ども |
命令形
|
活用の種類 |
捨つ | す | て
e |
て
e |
つ
u |
つる
uる |
つれ
uれ |
てよ
eよ |
タ行下二段活用 |
ちょっともの知り
活用表を見ると分かる通り、下二段活用の動詞は子音を取り除くと(例えば、「捨つ」という動詞の活用語尾の子音「t」を取り除くと)、「e・e・u・uる・uれ・eよ」と活用(変化)しますが、母音の音階「a・i・u・e・o」の「u」の音と、下の方の「e」の音の二段にまたがる活用なので、「下二段活用」と言われるわけです。
万が一、下二段活用の活用(変化)の仕方を忘れた場合は、この理屈を思い出してください。
以上のことが頭に入っていると、次の問題が簡単に解けます!
例題
傍線部の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
①初恋を捨てられずに、結婚しても生田斗真を忘れられない。笑
②〇〇大学の入試ぞ必ず受くる。
③悩み消えて、心慰む。
④都の人飢うる者多し。
解説
①「捨つ」「忘る」は、覚えるシリーズの動詞ではありませんので、四段か、下二か、上二です。
「ず」を付けると「捨てず」「忘れず」となります。
ローマ字で表せば「捨te+ず」「忘re+ず」となり、未然形が「e」の音と分かりますので、下二段活用となります。
また、下二段の活用表と照らし合わせれば、「て」「れ」のように「e」の音になるのは未然形か連用形となります。
いままでの例題で繰り返し練習してきましたが、動詞の下に来るものは主に助詞か助動詞で、文章中2回用いられている「られ(基本形「らる」)」は重要な助動詞です。
助動詞は何形に接続するか決まっているということも覚えていますね?
「らる」は必ず未然形の言葉にくっつく助動詞ですので、答えはいずれも未然形となります。
助動詞の接続を知っていると便利ですよね!!
②「受く」は、覚えるシリーズの動詞ではありませんので、四段か、下二か、上二です。
「ず」を付けると「受けず」となります。
ローマ字で表せば「受ke+ず」となり、未然形が「e」の音と分かりますので、下二段活用となります。
また、下二段の活用表と照らし合わせれば、「くる」のように「uる」の音になるのは連体形ですので、答えは連体形です。
文末なのに、なぜ連体形で終わっているのでしょうか?
・・・もう大丈夫ですね!
こちらも盛んに練習してきましたが、強意の係助詞「ぞ」が文中にありますので、文末は終止形ではなく連体形で終わらなければならない約束がありました。
係り結びの法則です。
現代語訳「〇〇大学の入試を必ず受ける。」
③「消ゆ」は、覚えるシリーズの動詞ではありませんが、上でも述べた通り、見た瞬間、「ヤ行下二段」と判断してください。
また、下二段の活用表と照らし合わせれば、「え」のように「e」の音になるのは未然形か連用形となります。
接続助詞「て」の上は必ず連用形でしたよね。
答えは連用形です。
④「植う」は、覚えるシリーズの動詞ではありませんが、上でも述べた通り、見た瞬間、「ワ行下二段」と判断してください。
下二段の活用表と照らし合わせれば、「うる」のように「uる」の音になるのは連体形となります。
また、体言(=名詞)の上は必ず連体形でしたよね。
ここは「者」という体言の上にありますので、答えは連体形です。
まとめ
「下二段活用」
下二段活用の見分け方
〇下二段活用の動詞は無数に存在するため、以下の見分け方を用いる。
「覚えるシリーズ」に属する動詞以外の動詞が出てきたら、その動詞は四段か、下二段か、上二段のどれかであるので、その動詞に「ず」、または「ない」をつけて未然形の音を確かめ、未然形の音が「e」だった場合、下二段活用と判断する。
〇以下の動詞は見た瞬間、下二段活用と判断する。
①漢字一字の下二段活用の動詞
「得」(現代の「得る」)、「寝」(現代の「寝る」)、「経」(現代の「経る」)
②ア行下二段の動詞は3つのみ
「得」(現代の「得る」)、「心得」(現代の「心得る」(納得する・了解する))、「所得」(それなりの地位を得る)
③ヤ行下二段の動詞は十数個程度しかない
「見ゆ」(現代の「見える」)、「覚ゆ」(現代の「覚える」)、「聞こゆ」(現代の「聞こえる」)、「越ゆ」(現代の「越える」)、「消ゆ」(現代の「消える」)、「燃ゆ」(現代の「燃える」)、「絶ゆ」(現代の「絶える」)、「肥ゆ」(現代の「肥える」)、「栄ゆ」(現代の「栄える」)など
④ワ行下二段の動詞は3つのみ
○「植う」、「飢う」、「据う」
下二段の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形
ず |
連用形
て |
終止形
。 |
連体形
とき |
已然形
ども |
命令形
|
活用の種類 |
捨つ | す | て
e |
て
e |
つ
u |
つる
uる |
つれ
uれ |
てよ
eよ |
タ行下二段活用 |
今日は、下二段活用の見分け方をマスターしてから寝てくださいね!笑
次回は、動詞の活用の種類、ラストの「上二段活用」についてです。
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