今日のポイント
用言の活用⑧
「覚えるシリーズ・ラ行変格活用」
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「覚えるシリーズ・ラ行変格活用」
以前の解説で、用言の活用の種類をマスターするには、まず動詞の数が極めて少ない活用の種類(上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用、ナ行変格活用、ラ行変格活用)、いわゆる「覚えるシリーズ」からマスターするべきだとお伝えしました。
ちなみに、「覚えるシリーズ」に該当しない動詞が出てきたら、それは必然的に四段活用、上二段活用、下二段活用のどれかであるということが分かりますので、いくつかのプロセスを経て、その中のどれかを決定します。
今日は、覚えるシリーズの「ラ行変格活用」です。
ラ行変格活用は、略して「ラ変」と呼ばれます。
ラ行変格活用の動詞メンバー
今まで見てきた変格活用の動詞と同じように、動詞の数が極めて少ない活用で、「あり」、「をり」、「侍り」(お仕えする、あります・ございます、~です・ます・ございます)、「いまそかり」(いらっしゃる)の四語しかありません。笑
…と、習いますが、実際は「然り・然り」(そうである・そのようである・その通りである)、「かかり」(こうである・このようである・この通りである)もラ変です。
これらのラ変は、下記のように副詞とラ変の「あり」が合体して一つの動詞となりました。
然り・・・・副詞「 さ 」(そう・そのよう)+「あり」=さり
然り・・・・副詞「しか」(そう・そのよう)+「あり」=しかり かかり・・・副詞「かく」(こう・このよう)+「あり」=かかり |
むかしの時代劇だと、お侍さんがよく「しかり!」って言ってましたけどね、今はどうなんでしょうか。笑
ラ変の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
あり | あ | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
をり | を | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
侍り | はべ | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
いまそかり | いまそか | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
ちょっともの知り①
終止形が「る」だと、「a・i・u・u・e・e」という変化の仕方をする正格活用の四段活用(←いずれ解説します)になりますが、ラ変の動詞は終止形が「i」の音となり、変化の仕方は「a・i・i・u・e・e」となって特殊なので変格活用と呼ばれます。
ちょっともの知り②
いずれみなさんは助動詞の活用を覚えなければなりませんが、実は助動詞の中にはラ変型の活用をする助動詞が多くあります。
例えば、打消の助動詞「ず」の補助活用、過去の助動詞「けり」、完了の助動詞「たり」、婉曲・推定の助動詞「めり」、伝聞・推定の助動詞「なり」、断定の助動詞「なり」など、ラ変の活用の仕方を知っていると、同時にこれらの助動詞の活用を覚えたのと同じになります。
すごくない?
ぜひこの機会に頭に入れるようにしてください。
以上のことが頭に入っていると、次の問題が簡単に解けます!
例題
傍線部の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
①今日、オンライン授業あること忘れてた!
②いとうれしきこと侍りき。
③いまそかる公達、かたみに笑みあへる。
④つらきことぞあまたある。
解説
①ダジャレみたいですが、「ある」とあるのでラ変です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、連体形だとすぐ分かりますね。
体言(=名詞)の上は連体形になる決まりは覚えていますか?
「こと」という体言の上にあるから、この「ある」は連体形と判断しても構いません。
ちなみに、用言(=動詞・形容詞・形容動詞)の上は連用形になります。
「て」という助詞の上も連用形になるのでしたよね!
合わせて、頭に入れておいてください。
②「侍り」とあるのでラ変です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、連用形か終止形だとすぐ分かりますね。
ここは、どちらでしょうか?
動詞「侍り」の下の「き」という言葉に注目してください。
動詞の下にくっつくものは、主に助詞か助動詞です。
今まで生きてきて、「き」という助詞は見たことも聞いたこともありませんよね。笑
従って、この「き」は助動詞です。
助動詞は「動詞」を「助ける」ものですので、主に動詞の下にあります。
ちなみに、この「き」は過去の意味を持ち「~た」と訳します。
助動詞にはすべて「接続」というものがあり、未然形や連用形など、何形の言葉に接続するか決まっています。
例えば、打消の助動詞「ず」は必ず未然形の言葉にくっつきます。
過去の助動詞「けり」は、どんなことがあっても連用形に接続します。笑
では、「き」は何形に接続する助動詞でしょうか?
答えは、連用形です。
「侍り」は、連用形接続の助動詞「き」の上にあるのですから、連用形だと分かるのです。
このように、助動詞の接続を知っていると、文法の問題に非常に役立ちますので、敬遠せず覚えるようにしてください!
現代語訳「たいそう嬉しいことがございました。」
③「いまそかる」とあるのでラ変です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、連体形だとすぐ分かります。
そして、「公達」という体言(=名詞)の上にあるので、やはり連体形です。
現代語訳「(その場に)いらっしゃる貴族の子弟は、互いに笑い合っている。」
④「ある」とあるのでラ変です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、連体形だとすぐ分かりますね。
しかし、文末なのに、なぜ終止形ではなく連体形なのでしょうか?
前回の解説で出て来た「係り結びの法則」があるからですよね!
文中に「ぞ・なむ・や・か」という助詞がある場合、文末は終止形ではなく連体形で終わる約束だったはずです。
ここでは、「ぞ」という強意の係助詞があるため、「あり」は終止形ではなく連体形になっているのです。
ちょっと復習でした。笑
現代語訳「辛いことがたくさんある。」
まとめ
「覚えるシリーズ・ラ行変格活用」
ラ行変格活用の動詞メンバー(ほぼ網羅しています)
①「あり」「をり」「侍り」「いまそかり(いまそがり・いますがり)」
②副詞+「あり」型(「さり」「しかり」「かかり」)
ラ行変格活用の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
あり | あ | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
をり | を | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
侍り | はべ | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
いまそかり | いまそか | ら | り | り | る | れ | れ | ラ行変格活用 |
今日は、ラ変の動詞メンバーと活用表をマスターしてから寝てくださいね!笑
次回は、「覚えるシリーズ・下一段活用」です。
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