今日のポイント
用言の活用⑥
「覚えるシリーズ・サ行変格活用」
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「覚えるシリーズ・サ行変格活用」
以前の解説で、用言の活用の種類をマスターするには、まず動詞の数が極めて少ない活用の種類(上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用、ナ行変格活用、ラ行変格活用)、いわゆる「覚えるシリーズ」からマスターするべきだとお伝えしました。
ちなみに、「覚えるシリーズ」に該当しない動詞が出てきたら、それは必然的に四段活用、上二段活用、下二段活用のどれかであるということが分かりますので、いくつかのプロセスを経て、その中のどれかを決定します。
今日は、覚えるシリーズの「サ行変格活用」です。
サ行変格活用は、略して「サ変」と呼ばれます。
サ行変格活用の動詞メンバー(ほぼ網羅しています)
動詞の数が極めて少ない活用で、なんと言うことでしょう、「す」「おはす」(いらっしゃる)の二語しかありません。笑
…と、習いますが、実際は「愛す」「死す」や、古文重要動詞となる「具す」(伴う・連れる)、「奏す」((天皇に)申し上げる)、「啓す」((皇后・皇太子に)申し上げる)、「念ず」(念仏を唱える・我慢する)、「ご覧ず」(ご覧になる)など、名詞に「す」がくっついたり、音読みの漢語に「す」が伴ったりするとサ変動詞となります。
(記事下の「まとめ」に、サ変動詞をほぼ網羅した一覧を掲載しています。)
例えば、「野球」という名詞に「す」をくっつけた「野球す」もサ変ですし、「恋愛」という名詞に「す」をくっつければ「恋愛す」となりますが、これもサ変です。
音読みではありませんが、「重んず」(重視する)、「軽んず」(軽視する)、「先んず」(先にする)など、「〇んず」という形もサ変です。
また、「全うす(完うす)」(完全に成し遂げる)、「重うす」(重くする)など、形容詞(←いずれ解説します)の連用形のウ音便に「す」がついたものもサ変です。
ちなみに、「貸す」や「失す」などはサ変と間違えられることが多いですが、いずれの動詞も漢語と「す」に分割してみると、「貸」「失」の部分が音読みではないことが分かりますので、サ変ではありません。
「貸」の音読みは「タイ」ですし、「失」の音読みは「シツ」です。
サ変の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
す | 〇 | せ | し | す | する | すれ | せよ | サ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
おはす | おは | せ | し | す | する | すれ | せよ | サ行変格活用 |
語幹とは、形が変わらない部分のことを指しますが、「おはす」の「おは」は形が変わらないので、この部分が語幹です。
一方、「す」は、「せ」になったり「し」になったり、形が変わらない部分がないので「語幹なし」となります。
ちょっともの知り
連用形が「せ」だと、「e・e・u・uる・uれ・eよ」という変化の仕方をする正格活用の下二段活用(←いずれ解説します)になりますが、サ変の動詞のみ連用形が「し」となり、変化の仕方は「e・i・u・uる・uれ・eよ」となって特殊なので変格活用と呼ばれます。
以上のことが頭に入っていると、次の問題が簡単に解けます!
例題
傍線部の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
①昨日の夜、彼氏とラインして超盛り上がったの!
②ゆめゆめ学校の授業を軽んずることなかれ。
③愛せば愛するほど、片思いはつらい。
④我、呉の国をせめんとす。
解説
①名詞+「す」のサ変です。
上の活用表と照らし合わせれば、連用形だとすぐ分かりますね。
また、昨日も言いましたが、「て」という助詞の上は連用形となりますので、答えはサ行変格活用の連用形です。
②和語+「んず」のサ変でしたね。
上の活用表と照らし合わせれば、連体形だとすぐ分かります。
また、以前の記事でも言いましたが、体言(=名詞)の上は連体形となりますので、答えはサ行変格活用の連体形です。
現代語訳「決して学校の授業を軽視してはならない。」
③名詞+「す」のサ変です。
上の活用表と照らし合わせれば、前者は未然形、後者は連体形だとすぐ分かります。
また、「ば」という助詞の上は未然形か已然形のどちらかになりますので、答えを割り出すヒントとなります。
一つ目の答えは、サ行変格活用の未然形です。
そして、「愛するほど」の「ほど」は体言ですので、先ほどの体言の上は連体形という約束から、答えはサ行変格活用の連体形となります。
④「~んとす」は、「~しようとする」と訳す慣用表現で、「す」はサ変です。
文章中、頻繁に出てきますので、記憶にとどめておいてください。
答えは、サ行変格活用の終止形です。
現代語訳「私は呉の国を攻めようとする。」
まとめ
「覚えるシリーズ・サ行変格活用」
サ行変格活用の動詞メンバー(ほぼ網羅しています)
①「す」「おはす」
②「具す」「啓す」「奏す」「念ず」「ご覧ず」など(音読みの漢語+す(ず))
③「愛す」「死す」など他多数(名詞+す)
④「疎んず」「重んず」「軽んず」「先んず」「諳んず」など(訓読みの和語+んず)
⑤「全うす(完うす)」「重うす」など(形容詞の連用形ウ音便+す)
サ行変格活用の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
す | 〇 | せ | し | す | する | すれ | せよ | サ行変格活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
おはす | おは | せ | し | す | する | すれ | せよ | サ行変格活用 |
今日は、サ変の動詞メンバーと活用表をマスターしてから寝てくださいね!笑
次回は、「覚えるシリーズ・ナ行変格活用」です。
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