今日のポイント
用言の活用⑩
「覚えるシリーズ・上一段活用」
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「覚えるシリーズ・上一段活用」
以前の解説で、用言の活用の種類をマスターするには、まず動詞の数が極めて少ない活用の種類(上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用、ナ行変格活用、ラ行変格活用)、いわゆる「覚えるシリーズ」からマスターするべきだとお伝えしました。
ちなみに、「覚えるシリーズ」に該当しない動詞が出てきたら、それは必然的に四段活用、上二段活用、下二段活用のどれかであるということが分かりますので、いくつかのプロセスを経て、その中のどれかを決定します。
今日は、覚えるシリーズのラスト、「上一段活用」です。
上一段活用は、略して「上一」と呼ばれます。
上一段活用の動詞メンバー(ほぼ網羅しています)
動詞の数が極めて少ない活用で、10数個しかありません。
上一段活用の動詞は、「干る(乾る)」、「射る」、「鋳る」、「着る」、「似る」、「煮る」、「見る」、「居る」、「率る」などです。
「ゐ」はワ行の言葉で、「い」と同じ発音をします(厳密に言えば異なりますが、どのように異なるかは様々な説があります)。
10数個しかないと言っても、今まで見てきた変格活用や下一段活用に比べると少し多いので、伝統的な覚え方があります。笑
「ひ・い・き・に・み・ゐ・る」がその覚え方で、それぞれ動詞の頭文字になっています。
最後の「る」は、それぞれの動詞の活用語尾の「る」です。
その他、応用として「顧みる」や「試みる」、「用ゐる」、「率ゐる」も上一段活用の動詞です。
上一段の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
干る | 〇 | ひ | ひ | ひる | ひる | ひれ | ひよ | ハ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
射る | 〇 | い | い | いる | いる | いれ | いよ | ヤ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
着る | 〇 | き | き | きる | きる | きれ | きよ | カ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
似る | 〇 | に | に | にる | にる | にれ | によ | ナ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
見る | 〇 | み | み | みる | みる | みれ | みよ | マ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
居る | 〇 | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
率る | 〇 | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
試みる | こころ | み | み | みる | みる | みれ | みよ | マ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
用ゐる | もち | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
*活用(変化)しない部分のことを語幹と言いますが、「干る(乾る)」、「射る」、「鋳る」、「着る」、「似る」、「煮る」、「見る」、「居る」、「率る」はすべての部分を活用に使う(すべての部分を活用表に記入する)ので、カ変「来」やサ変「す」、下一「蹴る」と同じく語幹はありません。
語幹の欄には、「〇」、または「×」を記入してください。
*「顧みる」や「試みる」、「用ゐる」、「率ゐる」は、それぞれ「かへり」「こころ」「もち」「ひき」は変化しないので、この部分が語幹となります。
*「射る」と「鋳る」はヤ行、「居る」と「率る」はワ行です。
「射る」は「い・い・いる・いる…」と活用するので「ア行」だと思われがちですが、上一段に「ア行」はありませんので注意してください。
ちょっともの知り
活用表を見ると分かる通り、上一段活用の動詞は子音を取り除くと(例えば、「見る」の子音「ⅿ」を取り除くと)、「i・i・iる・iる・iれ・iよ」となりますが、母音の音階「a・i・u・e・o」の、上の方の「i」一段のみが活用に用いられているため、「上一段活用」と言われるわけです。
万が一、上一段活用の活用(変化)の仕方を忘れた場合は、この理屈を思い出してください。
以上のことが頭に入っていると、次の問題が簡単に解けます!
例題
傍線部の動詞の活用の種類と活用形を答えなさい。
①もう1時だから、ちょっとインスタ見て寝るわ!
②かの姫にぞ似る。
③翁、山で取れし山菜を煮けり。
④馬に乗りける侍をひようと射る。
解説
①「見」とあるのでマ行上一段活用です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、未然形か連用形だとすぐ分かります。
もう大丈夫だと思いますが(笑)、「て」という助詞の上は連用形となりますので、正解は連用形です。
②「似る」とあるのでナ行上一段活用です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、終止形か連体形だとすぐ分かります。
これも盛んに練習してきましたが、係り結びの法則を起こす係助詞「ぞ」が文中にありますので、文末は終止形ではなく連体形で終わらなければなりません。
正解は連体形です。
現代語訳「あの姫に似ている。」
③「煮」とあるのでナ行上一段活用です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、「煮(に)」一文字の場合は未然形か連用形だとすぐ分かります。
「煮」の下に「けり」という言葉がありますが、これは助動詞です。
前回の解説で示した「連用形に接続する助動詞」の一覧に入っていましたよね。
そのため、「煮」は連用形接続の「けり」の上にあるわけですから、正解は連用形となります。
現代語訳「おじいさんは、山で取れた山菜を煮た。」
④「射る」とあるのでヤ行上一段活用です。
また、上の活用表と照らし合わせれば、終止形か連体形だとすぐ分かります。
文中に係り結びの法則を起こす係助詞もありませんので、終止形で取りましょう。
まとめ
「覚えるシリーズ・上一段活用」
上一段活用の動詞メンバー(ほぼ網羅しています)
「干る(乾る)」、「射る」、「鋳る」、「着る」、「似る」、「煮る」、「見る」、「居る」、「率る」
覚え方
「ひ・い・き・に・み・ゐ・る」
その他
「顧みる」、「試みる」、「用ゐる」、「率ゐる」
上一段活用の活用表
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
干る | 〇 | ひ | ひ | ひる | ひる | ひれ | ひよ | ハ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
射る | 〇 | い | い | いる | いる | いれ | いよ | ヤ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
着る | 〇 | き | き | きる | きる | きれ | きよ | カ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
似る | 〇 | に | に | にる | にる | にれ | によ | ナ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
見る | 〇 | み | み | みる | みる | みれ | みよ | マ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
居る | 〇 | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
率る | 〇 | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
試みる | こころ | み | み | みる | みる | みれ | みよ | マ行上一段活用 |
動詞 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の種類 |
用ゐる | もち | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ | ワ行上一段活用 |
今日は、上一段の活用表をマスターしてから寝てくださいね!笑
次回は、「四段活用」です。
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