この記事で分かること
☆古典(古文)の勉強法
発展編(大学入学共通テスト対策)
①センター試験と大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)の問題形式の共通点と相違点
②大学入学共通テスト「古文」の問題形式と効果的な勉強法とは?
古典(古文)の勉強法
センター試験と大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)の問題形式の共通点と相違点
前回の記事で、古典(古文)の基礎的な勉強法がつかめたと思います。本日は、大学入学共通テストで満足のいく点数を取るために、どのような対策が必要なのかを解説していきたいと思います。以前、小説編でも申し上げましたが、2020年1月29日に文部科学省が示した「令和3年度大学入学者選抜問題作成方針」には、「(新テストは)センター試験の良問の蓄積は受け継ぎつつ」と明記されています。そのため、センター試験と激しく乖離するような問題形式にはならないと考えるのが妥当でしょう。センター試験「古文」と大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)を比較してみましょう。
センター試験「古文」の問題形式(過去15年間)
第3問(配点50点)
《作品ジャンル》 ・ほぼ毎年「物語」作品が出題された。 ➩2007年「仮名草子」、2011年「軍記物語」、2016年「説話」、2018年「歌論」の4回のみ、物語以外の作品が出題された。 ➩物語作品では、「和歌」が頻出となる。 (2006年、2007年、2009年、2010年、2012年、2013年、2015年、2017年、2019年の計9回、和歌が出題されている。)
《問題形式》 問1 傍線部の解釈(10語前後の短文、または語句の意味) 5点×3問=15点 ➩毎年必ず出題された。 問2 以下の3パターンが出題された。
➩ほぼ毎年出題(2006~2008年、2010~2014年、2016年、2017年) または、
➩近年頻繁に出題(2009年、2015年、2019年、2020年) または、
問3~問5 傍線部の説明・理由 7~9点×3問 問6 内容合致、または本文全体の趣旨に関する問題 6~7点 ➩毎年必ず出題(2011年~2013年のみ文章の表現と内容) *希に文学史が出題されることもある。(2008年) |
平成29年度大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)
第4問
3つの文章 文章ⅠⅡ『源氏物語』(桐壺の巻) 文章Ⅲ『原中最秘抄』
問1 省略された表現の挿入 ➩「めやすし」「をかし」「あぢきなし」など古文単語の知識と文脈判断により解答する。 問2 和歌の説明として適当でないものを選ぶ。 ➩「掛詞」や「縁語」、「もがな」(終助詞)「長恨歌」などの言葉を含む選択肢が並び、和歌の修辞法や文法、古典常識が総合的に問われている。 問3 傍線部の文章の解釈 ➩「いかでか~推量」の反語表現の知識と文脈判断により解答する。 問4 傍線部の説明 ➩丁寧語「侍り」を含む文章の説明で、従来のセンター試験の問2に相当し、語彙や文法事項の総合力が問われている。 問5 傍線部の表現とその効果として適当でないものを選ぶ。 ➩傍線部の文章に関する深い考察(思考力・判断力)を問う新傾向の問題。 問6 文章Ⅲの内容の説明 ➩従来のセンター試験の問6に相当する。 |
平成30年度大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)
第4問
『源氏物語』(手習の巻)
問1 登場人物の心情の説明 ➩従来のセンター試験の問3~問5に相当する。 問2 傍線部の解釈(5語前後の語句の意味)3問 ➩従来のセンター試験の問1に相当するが、文脈判断の比重が増している。 問3 登場人物の説明として適当でないものを選ぶ。 ➩従来のセンター試験の問3~問5に相当する。 問4 傍線部の説明 ➩「なむ」の識別や係り結び、「人やりならず」(連語)を含む文章の説明で、従来のセンター試験の問2に相当し、語彙や文法事項の総合力が問われている。 問5 傍線部の言葉の典拠になった和歌に関する授業中の先生と生徒の会話の内容合致(2つ選ぶ) ➩傍線部の文章に関する深い考察(思考力・判断力)を問う新傾向の問題。 |
センター試験と大学入学共通テスト試行調査(プレテスト)の問題形式の共通点と相違点は以下の通りです。
共通点
①センター試験と試行調査、どちらにも語句、または文章の解釈・説明の問題が出題されている。
②近年盛んに出題された敬語に関する問題が、試行調査でも継続して出題されている。
③「物語」作品が、試行調査でも継続して出題されている。
④センター試験と同じく、試行調査でも和歌が継続して出題されている。
相違点
①センター試験のように、読解できればそれでよいというものではなく、試行調査では傍線部の深い考察を求める新傾向の問題が出題されている。
②試行調査では、『源氏物語』のような文学史的に有名な作品が出題されている。
*全国の高校生はそれぞれ異なる教科書を用いており、授業で扱う作品もまちまちであるため、高校で学習した学習していないという不公平が出ないように、センター試験では教科書には載らない、知名度の低い作品が出題されることが多かった。しかし、試行調査では、我が国古典文学の至宝『源氏物語』が出題されていることから、文学的価値のある有名な古典作品を高校生に学ばせる意図が文科省にはあるように感じられる。
③「適当でない」選択肢を選ぶ問題が比較的多く出題されており、当然答え以外の選択肢は適当なもの、つまり本文読解のヒントとして活用できるため、この点では文章が読解しやすくなっている。
大学入学共通テスト「古文」の問題形式と効果的な勉強法とは?
平成29、30年度の試行調査では、いずれも従来のセンター試験に近似した「知識」型の問題形式をベースにして、新たに「思考力」「判断力」を必要とする新傾向の設問が加わるという問題形式になりました。つまり、従来のセンター試験のような古文単語や文法事項といった「知識」型の対策が必要であると同時に、作品世界や登場人物の行動・心情を深く考察できる思考力・判断力を試す新傾向の問題に対する備えも必要になります。そのため、大学入学共通テストで結果を残すためには、以下の学習が必要になると考えられます。
➩従来通り、古文単語や連語、慣用表現などボキャブラリーと文法事項の暗記は必須。
➩従来通り、敬語の種類と敬意の方向についての学習を行うことが必要。
➩「物語」作品を読み慣れ、物語の基本的な話の展開(パターン)について知ることが必要。
➩和歌の解釈に慣れることや、「掛詞」や「縁語」といった和歌の修辞法についての学習を行うことが必要。
➩試行調査では、大学入試改革のキーワードである「思考力」や「判断力」を試す問題が出題されており、もはや古文の読解ができることは前提条件となっていて、その上で文章の深い考察を行う習慣をつけることが必要。
➩教科書に掲載されるような重要作品の学習が必要。
まとめ
古典(古文)の勉強法
発展編
☆センター試験と同じく、語句や文章の解釈を求める問題や識別問題、敬語の敬意の方向を問う問題が出題されるため、古文単語や文法事項のマスターが必要不可欠となる。
☆センター試験と同じく「物語」作品が継続して出題される可能性が高いので、「物語」作品を読み慣れ、物語の基本的な話の展開について知ること、及び「和歌」の解釈や修辞法について学習することが重要である。
☆読解ができるのは当たり前で、文章の深い考察が求められる新傾向の問題が出題されるため、センター試験以上に古文を正確に読む力を養成することが必要になる。
☆新傾向の問題に慣れるため、日ごろの古文の学習では深い文章の理解を行うこと、そして新傾向の問題に慣れることが必要である。
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