この記事で分かること
☆古典(古文)の勉強法
基礎編
①古文単語や助動詞の暗記なくして古文の読解力の向上はありえない!
②用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用が分からなければ、古文の読解力の向上はありえない!
古典(古文)の勉強法
「古文はどうやって勉強すればいいの?」とか、「古文は何から手を付けていいか分からない」といった言葉を、毎年よく耳にします。もちろん、学校の先生方は、ことあるごとに古文の勉強の仕方を生徒に説明しているとは思います。しかし、一つ一つの文法事項が、読解をする上で何の役に立つのかということまでは具体的に伝えていない先生が多いように見受けられます。そのため、子どもたちは、何に活かされるかも分からない文法事項を、延々と教わっているような感覚にとらわれているのだと思います。そこで、本日は、古文を読解する上で、どのような勉強が必要不可欠なのかを、例題を用いながら根拠をもって説明していきたいと思います。
古文単語や助動詞の暗記なくして古文の読解力の向上はありえない!
まず、次の問題に解答してみて下さい。
次の「いろは歌」を読み、後の設問に答えなさい。
色 は 匂 へ ど 散 り ぬ る を、
我 が 世 誰 ぞ 常 な ら む。
有 為 の 奥 山 今 日 越 え て、
浅 き 夢 見 じ、酔 ひ も せ ず。
【語注】
有為(うゐ)の奥山…この世の中は常に移り変わっていて、一つとして安住できるものはない過酷な世界であるということを険しい「奥山」にたとえている。
問1 傍線部「色は匂へど散りぬるを」の口語訳として適当なものを次から選びなさい。
ア 花は美しく輝いているが、いずれは散ってしまうものだから、
イ 花は美しく輝いているが、いずれは散るようなものだから、
ウ 花の香りは甘く漂ってくるが、いずれは散るものであるのだから、
エ 花の香りは甘く漂ってくるが、いつまでたっても散ることはないのだから、
問2 傍線部「我が世誰ぞ常ならむ」の口語訳として適当なものを次から選びなさい。
ア この世の中で誰が永遠に生きられないか。
イ この世の中で誰が永遠に生きられるのであるか。
ウ この世の中で誰が永遠に生きているのか。
エ この世の中で誰が永遠に生きられるだろうか。
小学生の時に暗唱させられた人も多いと思いますが、「いろは歌」を漢字交じりにしたのが上記の文章です。平安時代後期にはすでに成立していたと考えられていますが、一つとして同じ仮名を用いずにいわゆる50音(47音)が学べ、当時流行していた今様(歌)のリズムである七五調になっていて覚えやすく、近代になってからも子どもたちの字の学習に用いられていました。この「いろは歌」には、どのような意味があるのでしょうか。早速、現代語訳の問題を解いていきましょう。
まず申し上げておきたいのが、古文の設問になる傍線部には「古文単語」と「助動詞」が含まれていることが多いということです。学校では、「古文単語」と「助動詞」の小テストを頻繁に行いませんでしたか。それは、傍線部がこの2つの言葉で構成されていることが頻繁にあるからです。その証拠に、2019年度大学入学共通テスト(プレテスト)第4問「古文」の問題では、問1から問5までの傍線部に古文の重要単語と助動詞が含まれていました。これで、古文単語と助動詞を暗記しないわけにはいかないことが分かりますよね。笑
問1をご覧ください。この問題を解くには、「にほふ」という古文重要単語と、「ぬ」という助動詞の意味を知っていなければなりません。「にほふ」は代表的な古今異義語で、古文では「(色が)美しく(照り)輝く」といった視覚的な意味になります。そのため、この時点でウとエは除外できます。次に、正しい選択肢を見極める上でポイントになるのは、「散る」という動詞の下にある「ぬる」という言葉です。
ちなみに、動詞とはどういうものか分からない生徒がまれにいますが、動詞とは「ウ(u)」の音で終わり、何らかの動作や状態を表す言葉です。例えば、「スマホを見る」の「見る」は動詞です。なぜなら、「みru」のように「ウ(u)」の音で終わっていますし、見るという動作を表しているからです。「書く」も「かku」で「ウ(u)」の音で終わり、動作を表すので動詞です。「あり」「をり」「侍り」など、ラ行変格活用動詞のみ「イ(i)」の音で終わる特徴があるので注意してください。これで、全ての動詞の見極めが可能になるはずです。
話を元に戻しますが、動詞を助けるものが助動詞です。そのため、この「ぬる」は助動詞であることが分かります。そして、助動詞の中で「ぬる」という形を持っているものは、完了の助動詞「ぬ」しかありません。助動詞は、後に続く言葉などの影響によって形を変えます。ここでは、「を」という助詞の影響で連体形「ぬる」に変化しています。
助動詞 | 接続 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 意味 |
ぬ | 連用形 | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | 完了 |
以上のことから、「散った」とか「散ってしまった」など、完了の意味で訳してある選択肢をチョイスすればよいということになります。従って、答えはアです。
この設問から分かることは、以下の通りです。
1 古文の設問(傍線部)には古文単語や助動詞が含まれていることが多い。
➩古文単語や助動詞の意味を覚えることが必要不可欠
2 助動詞は下に続く言葉などによって形を変える。
➩助動詞の活用表を頭に入れることが必要不可欠
これで、なぜ学校の先生が「古文単語と助動詞を覚えなさい」と口を酸っぱくしてみなさんに伝えていたのか、その理由が理解できたのではないかと思います。古文単語と助動詞の知識なくして、設問に解答することは不可能です。それどころか、設問(傍線部)に到達するまでの古文さえ適切に読み進めていくことはできないでしょう。筆者は古文が得点源の1つでしたが、単語帳にある単語はすべて覚えましたし、トイレには自筆の助動詞活用表を貼り付け、トイレに行くたびごとに復習するようにしていました。「1トイレ1助動詞」という感じにです。笑
筆者おススメの参考書
これ一冊で、ほぼすべての古文単語をカバー。CD付。
古文単語FORMULA600【改訂版】 (大学受験 東進ブックス)
先輩たちが愛用してきた入試古文定番の参考書
次に問2ですが、助動詞の知識がある方は「む」が助動詞であるということは1秒で分かります(覚えればよいだけなので、すぐに知識は獲得できます)。そして、「む」が文末にある際、一人称主語の時は「意志」、三人称主語の時は「推量」の意味になるということも知っているはずです。今回は「我が世」が三人称主語ですので、「む」を推量で訳さなければならないため、答えはエとなります。
花もいずれ枯れてしまうように、我々は永遠にこの世に存在することはできない。だから、もはや浅はかな夢に酔いしれることもせず、仏道修行に専念し、来世では極楽浄土に生まれよう。諸説ありますが、これが「いろは歌」の意味なのです。
用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用が分からなければ、古文の読解力の向上はありえない!
「風立ちぬ」というジブリ映画がありますが、どのような意味か分かりますか。この質問をすると、「風が吹かない」と自信満々に答える生徒がよくいます。ご覧になった方はご存じだと思いますが、この映画は「風」が重要なファクターとなっていました。
例えば、二郎と菜穂子が最初に出会うシーン。二郎が3等客車の外で本を読んでいたところに突風が吹き、二郎の帽子が飛ばされます。それを、偶然2等客車の外にいた菜穂子がナイスキャッチするわけですが、つまり「風」がこの二人の運命的な出会いを演出したのです。だから、「風が吹かない」では困るのです。笑
先ほどの「いろは歌」の解説のところでも申し上げましたが、動詞の後に続くのが助動詞です。「立つ」が「ウ(u)」の音で終わり、動作を表しますので動詞です。従って、その後にある「ぬ」が助動詞となります。ただし、やっかいなことに、助動詞の中で「ぬ」という形を持っているものは2つあるため、そのどちらなのかを考えなければなりません。これを「識別(問題)」と言い、入試頻出の文法事項となります。
助動詞 | 接続 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 意味 |
ず | 未然形 | ず | ず | ず | ぬ | ね | 〇 | 打消 |
ぬ | 連用形 | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね | 完了 |
*打消の助動詞「ず」の補助活用は割愛しました。
打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」なのか、または完了の助動詞「ぬ」の終止形なのか。このように、2つの助動詞のどちらなのかを悩んだ場合、助動詞の「接続」を活用します。この「ぬ」に限らず、こうした識別問題は「接続」を用いて解答します。
打消の助動詞は「未然形接続」です。これは、つまり「未然形」にしか接続しない、未然形の言葉の後ろにだけくっつくということです。同じように、完了の助動詞は「連用形接続」ですが、これはつまり「連用形」の言葉にしかくっつかないということを意味しています。このことから、「ぬ」が接続している「立つ」という動詞が、現在何形なのかを考えてあげると答えが出るわけです。この時に、動詞(用言)の活用の知識が役立つのです。「立ち」が未然形なのか、それとも連用形なのか、それが分からなければ「風立ちぬ」の意味がつかめないのです。なぜ学校の授業で、動詞(用言)の活用を盛んに練習したのか、もう理解できましたね。用言の活用がまだおぼつかない方は、早急に復習を行うことを推奨します。
さて、答えですが、「立ち」はタ行四段活用動詞の連用形ですので、この「ぬ」は完了の助動詞。用言と助動詞の知識があれば、「風立ちぬ」は「風が吹いた」という意味だということが分かるのです。
まとめ
古典(古文)の勉強法
基礎編
☆傍線部は古文単語と助動詞が含まれている可能性が極めて高いので、古文単語と助動詞の暗記は不可欠である。
☆用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用が分からなければ、識別の問題が解けないだけではなく、本文の正確な読解が出来ない。
上記が、「古文は何から手を付けていいか分からない、何を勉強すればいいの?」の答えです。古文単語、助動詞、用言の活用は古文の基礎として身に付けるものですが、これがしっかりしていれば古文の学習の半分以上は終わったといっても過言ではありません。この3つの要素を攻略したころから、古文の成績は徐々に上昇し、安定していきます。ぜひ今日から、この3点の学習に努めてください。
関連記事
コメント