この記事で分かること
☆新テスト「小説」の読解法
→新テスト「小説」を読解する際に、どのようなことに注意すればよいのか?
2.入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
①入試小説における「登場人物の心情」の捉え方
②入試小説定番の「型」(大枠)に沿った読解の仕方
③入試小説「心情把握」問題、選択肢のカラクリ
入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
長きに渡るセンター試験の時代が幕を閉じ、今年度より新テストに移行します。英語の外部試験利用が延期されたり、記述式の問題が見送られたりするなど、色々朝令暮改の未確定な状態での試験施行となり、受験生のみなさんも暗中模索の状態で不安を抱えていることと思います。そこで、以前の記事で新テスト「小説」の問題がどのような形式で出題されるのかを徹底分析しました。
ちなみに、新テスト(大学入学共通テスト)の試行調査(プレテスト)は今まで2回行われています。まだ問題を解いていない方は、下にリンクを貼っておきますので、ぜひ一度挑戦してみてください。
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以前の記事で、新テスト(試行調査)が従来のセンター試験とはどのように異なっているのか、両者を見比べることによって、新テストの問題形式を分析しました。その結果として、センター試験と共通している要素が多分にあることが分かりました。従って、センター試験と同様に、今年度も「小説」の学力を向上させるためには、以下の3点の学習の遂行が求められます。
①文学的な語彙の習得
②心情把握の問題に慣れる
③文章の表現・構成を意識しながら読む
入試小説「心情把握」問題、選択肢のカラクリ
本日も②「登場人物の心情把握」問題の解答法に関して重点的にお話ししようと思います。前回の記事で、入試小説には定番の「型」(大枠)があり、少なくとも2回描かれる「出来事・事件」の後の心情の変化を、「表情」や「動作、身振り手振り」「セリフ」「情景」などの描写に注意して読み取ることが重要であるということをお話ししました。
従って、入試小説を読み進めていくうちに必ず訪れる「出来事・事件」の描写に差し掛かったら、何かしら心情が変化するに違いないと考えて、その変化に注意を払うことが求められるのです。ただし、実はそれだけでは不足です。以下に掲載した選択肢は、数年前に実施された東進ハイスクールのセンター試験直前プレテスト「小説」の問題から抜粋しました。センター試験「小説」の心情把握問題に用いられる選択肢の構成を解説するのに適当だったため、授業で解説したものです。説明の都合上、選択肢を2つの構成に分割し、矢印で区切っています。
問2 傍線部A「到底他の忖度を許さないところの、複雑な苦悩を秘めていた」とあるが、それはどういうことか。
(「複雑な苦悩」の内実を問う問題なので、こちらは心情把握問題の一種です。)
《選択肢》
①混血児であることから精神的圧迫を受けて神経が過敏になった上に、日本とイギリスの関係が危うくなるに従い、
↓
自分の民族的な根拠に対する不安や葛藤が加わり、安易な同情や理解を許さないほどの苦悩を内包していたということ。
②混血児であったため他者を警戒する心が植えつけられたが、日本とイギリスの関係も悪化の方向に進んでいるなかで、
↓
自分の生い立ちに対する不満やいらだちが強くなり、他者との打ち解けた交流を阻むほどになっていったということ。
問4 傍線部C「微かながら、私はほっとしたような気持ちさえ感じ出して」とあるが、それはどういうことか。
(「ほっとしたような気持ち」の内実を問う問題なので、こちらも心情把握問題の一種です。)
《選択肢》
①イギリスと日本が敵対して戦争に向かっているさなかに、突然、マリアンヌは亡くなってしまったが、平和への願いを自分たちに伝えていたことに、
↓
わずかな希望を感じ取ることができたということ。
②イギリスと日本が敵対して戦争になれば、マリアンヌと自分との関係が悪化することも考えられたが、彼女の死の通知が届けられ、二人が親密さを共有し続けたままでいられたことに
↓
淡い幸せを感じたということ。
③イギリスと日本が敵対して戦争という最悪の状況を迎える前に、マリアンヌが短い生涯を終えて、これ以上の苦悩を味わわずに済んだことを思うと、
↓
ほんの少しではあるが、慰めが見出されたということ。
矢印で分割したのは、選択肢が2つの構成に分かれていることを明確にするためです。いずれの選択肢も、次のような構成になっていることに気が付いたでしょうか。
出来事・事件(プロセス)
↓
心情
つまり、入試小説「心情把握」問題の選択肢は、「心情」だけが記載されているのではなく、その心情を変化させるに至った「出来事・事件」(プロセス)の内容に関しても正誤を問う構成になっているのです。ちなみに、センター試験の選択肢も見てみましょう。
問2 傍線部A「誠に物珍しい楽しい事が急に湧いたような気がして」とあるが、それはどういうことか。(2017年度センター試験「小説」)
《選択肢》
④籠を持って子どもと出掛けたいと思いながら、適当な行き先が思い当たらずにいたところ、翌日は秋晴れになりそうだから、展覧会の絵を見た後に郊外へ出掛ければいいとふいに気がついて、
↓
うれしくなったということ。
こちらの選択肢の構成も、「出来事・事件」(プロセス)→「心情」となっています。このことから、入試小説の心情把握問題では、心情の変化にだけ着目するのではなく、心情を変化させるに至った過程(出来事・事件)に関しても注意深く整理しながら読むことが必要であるということが分かります。
筆者のおススメとしては、入試小説の本文を読み進めていく中で、「出来事・事件」(プロセス)に差し掛かったら、そこからことさら注意深く読むことを心掛けます。そして、傍線部が引かれている部分の心情を突き止め、その後文章を遡ってもう一度「出来事・事件」(プロセス)を整理し、その上で選択肢を吟味します。そうすれば、確実な解答を導くことができるでしょう。
その他、小説を読解する際のテクニカルな注意点
①小説本文を読む前に設問に目を通し、誰の心理が中心に問われているのかをまず確認し、「その人物の心理」と、「その心理を変化させるに到った出来事・事件」(プロセス)を中心に、整理しながら読んでいく。
②登場人物には印をつけ、人物同士を線で結び、本文の中で簡易的な相関図を完成させる。
③小説の舞台(時制)より過去の出来事(場面)は「P(Past)」で括り、本文を時系列に整理する。
④字面だけを追うのではなく、イメージする。小説をマンガ化(実写化)する。
マンガや小説を読むときは、チャプターごとに読後、「どんな出来事があって、それによってどのように心理が変化したか」、きちんと総括する習慣をつけましょう。最初は面倒くさいかもしれませんが、何事も習慣です。これが出来ないうちは、本文をただ漫然と読むくせは直りません。
まとめ
入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
☆入試小説「心情把握」問題の選択肢は、「出来事・事件(プロセス)+心情」のように因果関係で構成されていることが多い。
☆入試小説を読み進めていく中で、「出来事・事件」(プロセス)に差し掛かったら、そこから特に注意深く読み、傍線部が引かれている部分の心情を突き止め、その後文章を遡ってもう一度「出来事・事件」(プロセス)を整理し、その上で選択肢を吟味する。
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