この記事で分かること
☆新テスト「小説」の読解法
→新テスト「小説」を読解する際に、どのようなことに注意すればよいのか?
2.入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
①入試小説における「登場人物の心情」の捉え方
②入試小説定番の「型」(大枠)に沿った読解の仕方
③入試小説「心情把握」問題、選択肢のカラクリ
入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
長きに渡るセンター試験の時代が幕を閉じ、今年度より新テストに移行します。英語の外部試験利用が延期されたり、記述式の問題が見送られたりするなど、色々朝令暮改の未確定な状態での試験施行となり、受験生のみなさんも暗中模索の状態で不安を抱えていることと思います。そこで、前々回の記事で新テスト「小説」の問題がどのような形式で出題されるのかを徹底分析しました。
ちなみに、新テスト(大学入学共通テスト)の試行調査(プレテスト)は今まで2回行われています。まだ問題を解いていない方は、下にリンクを貼っておきますので、ぜひ一度挑戦してみてください。
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前々回、新テスト(試行調査)が従来のセンター試験とはどのように異なっているのか、両者を見比べることによって、新テストの問題形式を分析しました。その結果として、センター試験と共通している要素が多分にあることが分かりました。従って、センター試験と同様に、今年度も「小説」の学力を向上させるためには、以下の3点の学習の遂行が求められます。
①文学的な語彙の習得
②心情把握の問題に慣れる
③文章の表現・構成を意識しながら読む
①の文学的な語彙については、前々回筆者おススメの参考書をご紹介しました。ちなみにこちらです。
筆者おススメの参考書・問題集
入試小説における「心情」の捉え方
本日は②「登場人物の心情把握」問題の解答法に関して重点的にお話ししようと思います。入試小説において、登場人物の心情はどこから捉えるべきか、みなさんはきちんと知っていますか。感覚に頼り、「なんとなく」で選択肢をチョイスしていませんか。入試小説で心情把握の問題が出題される場合、根拠となる描写が必ず存在します。なぜか。それは明確な根拠がないと、問題として成立せず、大学入学共通テストほどの大規模な入試であれば多方面から非難が殺到するからです。そのため、隅々までよく読めば、必ず根拠となる叙述が用意されているため、訓練次第では誰でも適切に心情を捉えることが出来るのです。では、登場人物の心情はどのようにして捉えたらよいのでしょうか。試しに、次の問題に解答してみてください。
次の文章を読んで、後の問に答えなさい。
気がつくと、あの悲惨な事故から三週間が経っていた。
昨日までグラグラと容赦のなかったはずの、真夏の太陽を隠した黒くたれこめた厚い雲は、クーラーの活動をこの上もなく促進する。あの夜と同じような異様な寒さが、ケンジの全身を覆っていく。タケシの机には、小さな菊の花が幾輪も、無邪気に顔をもたげている。まるで、この机の主人には何事もなかったかのように。
突然、教室のみんながワイワイ騒ぎ出した。笑みと歓声が教室中を駆け巡る。文化祭の出し物が決まったのだ。
お化け屋敷・・・正 正 正 一
写 真 館・・・正 丅
作文の掲示・・・一
演 劇 ・・・正 正
ケンジはぼんやり窓の外を眺めていた。そして、ひとつ大きなため息をついた。
「ああ、タケシが生きていたらなあ。」
ケンジの声はかすれていた。今にも雨がこぼれ落ちそうな空が、ケンジの心を代弁しているようだった。
問 傍線部「ケンジはぼんやり窓の外を眺めていた」とあるが、この時のケンジの心理として、最も適当なものを選択肢より選びなさい。
ア なかなか決まらなかったが、クラスの出し物が決定し、人知れず安堵している。
イ タケシが死んだというのに、もう歓声を上げるクラスメートへの怒りがこみ上げている。
ウ タケシが死んでしまったため、ホームルームにも無関心で、悲しみにくれている。
エ いよいよ文化祭も目前に迫り、期待と不安が入り混じっている。
オ クラスの出し物のくだらなさに、内心不満を抱いている。
こちらは、心情把握の方法論を生徒に解説するために私が考えた物語です。笑
答えは分かりましたか。入試小説において、登場人物の心情を割り出す根拠になるのは、以下の項目です。
①登場人物の表情
例「仏頂面をしている。」←不機嫌な気持ちを表している。
②登場人物の動作、身振り手振り
例「何度も後ろを振り返った。」←不安な心情、または落ち着かない心理を表している。
③登場人物のセリフ
例「別に気になってはいないさ。」←強がり、虚勢を張っている。または、冷静な心情を表している。
④情景描写
例「行く手には晴れ間が見え、うっすらと虹がかかっていた。」←不安が晴れ、希望が生じている様。
小説の隅々から、これらの要素をしらみつぶしに探し、登場人物の心情を摘出するのです。これが入試小説における、根拠を持った、合理的な心情の捉え方なのです。今回の例題で言えば、ケンジの心理を探り当てる根拠となる描写は以下の4点です。
・ひとつ大きなため息をついた←動作・・・落胆
・「ああ、タケシが生きていたらなあ。」←セリフ・・・タケシが死んだことに対する喪失感
・ケンジの声はかすれていた←動作・・・元気のない様子
・今にも雨がこぼれ落ちそうな空が、ケンジの心を代弁している←情景描写・・・悲しみ
以上の根拠から考え合わせて、答えはウとなります。これが、入試小説の根拠を持った心情把握の方法の実例です。
入試小説定番の「型」(大枠)に沿った読解の仕方
みなさんは、入試小説には「型」というものが存在しているのをご存じでしょうか。入試小説では、大きく分けて以下のようなパターンで文章が出題されます。
・掌握小説の全文
・リード文+小説の抜粋
小説全文が掲載されようと、リード文と小説の抜粋の合体型であろうと、いずれのパターンにせよ、出題される物語には「型」があり、多かれ少なかれその大枠に則って物語は進行します。以下に入試小説定番の「型」を示しますので、入試小説を読解する際の道しるべとして下さい。
入試小説定番の「型」(大枠)
登場人物の心情A(ニュートラルな心情)
↓
出来事・事件①
↓
登場人物の心情A´(不安・心配・苦悩・混乱・葛藤・危惧など否定的な心情に変化する)
傍線が引かれ、設問となる。
↓
出来事・事件②
↓
登場人物の心情B(悟り・境地・達観など肯定的な心情に変化する)
傍線が引かれ、設問となる。
まず、主要人物のニュートラルな心情が描かれますが、まだ心情は揺さぶられていません。この時点での心情を仮に「心情A」とします。その後、1回目の出来事・事件が起こり、登場人物の心情がかき乱されます。この時の心情は、不安や葛藤など、否定的な要素になることが多いです。これを仮に「心情A´」とします。そして、次に2回目の出来事・事件が勃発し、そのことによって登場人物の心情は今までのものとは大きく変わり、何らかの悟りや達観にまで心が昇華されます。非常に大きな心理の変化となりますので、これを仮に「心情B」とします。
このように出来事・事件が2回用意され、その都度心情が変化するわけですが、この「変化した心情A´B」に傍線が引かれ、その心情がどのようなものかを問われることが多いのです。そして、その傍線が引かれた部分の心情を、さきほどの項目で解説した「感覚に頼らない、根拠を持った心情把握の方法」で読み取るのです。
なぜこのような「型」になることが多いかといえば、作問者が問題を作りやすいからです。出来事や事件、心情の変化が単発では入試として難易度が低くなりますし、傍線を引くのに都合がよい箇所が少ないので問題も作りにくいです。そのため、作問者は、上記の「型」になっている小説を見つけ出すか、または小説からその「型」になっている部分を抜粋し、問題を作成するのです。ちなみに、入試小説では、リード文にも重要な情報が盛り込まれていますので、小説の一部と思って注意して読むようにしてください。
以上のことから、入試小説を効率よく読解するためには、入試小説の「型」(大枠)を意識しながら読み進めるということが重要になってくるわけです。平成29年度大学入学共通テスト試行調査の小説も、その多分に漏れず、この「型」のものとなっていました。
平成29年度大学入学共通テスト試行調査
遅れてやってきたツバメが群れに加わる
↓ 「あたし」たちは問題なく受け入れる(心情A) ↓ そのツバメは頻繁に群れから離れ、王子(の像)の社会奉仕に協力する(出来事・事件①) ↓ 「あたしには不思議でならなかった」(心情A´) ↓ そのツバメは、越冬の旅に出ないで(死を覚悟で)王子のために活動を継続することを決断 「あたし」は、そのツバメを説得しようとして言い合いになる(出来事・事件②) ↓ 「どうせあたしにはわからない、どうでもいいことだ」(心情B) |
どうですか。ドンピシャで合致していますよね。この小説では、心情Bの「わからない」に傍線が引かれていました。
まとめ
入試小説「登場人物の心情把握」問題の解答法
☆入試小説における「心情」の捉え方の根拠となる「表情」と「動作、身振り手振り」「セリフ」「情景」などの描写から、登場人物の心理を突き止める。
☆入試小説定番の「型」(大枠)に沿って読解し、「出来事・事件」後の心情の変化を、「表情」や「動作、身振り手振り」「セリフ」「情景」などの描写に注意して読み取る。
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