この記事で分かること
☆現代文(評論文)の勉強法
→普段、どのようなことに注意して、現代文の勉強をすればよいのか?
☆現代文のノート作り
→普段、現代文のノートはどのように整理すればよいのか?
⚠︎「現代文(評論文)の読解法」については、次回の記事でお教えします。
現代文(評論文)の勉強法
私が国語の教員ということもあり、みなさんからご要望が多かった「現代文の勉強法」についてお話しします。今回は、「評論文」編です。現代文の授業を受け持つことになった時は、まず最初に、私は生徒に次のように言います。
現代文は暗記科目である。
現代文は、ある程度の知識がないとスタートラインにさえ立てない教科だと思っています。長年の経験から、本を読み慣れた生徒には総じて読解力があると言えますが、これは読み慣れていることに加えて、読解する上で必要な様々な知識が読書を通して彼らの脳に組み込まれていくため、読解が容易になるのです。従って、あまり読書をして来なかった高校3年生でも、この「知識」さえインプットしてくれれば、現代文の成績は必ず上昇します。そういう生徒を何人も見て来ています。では、どのような知識の習得に努めればよいのでしょうか。それは、以下の3点です。
1,漢字
2,評論文重要語
3,評論文頻出テーマ
漢字
全国の国語の先生がおっしゃっていることだと思いますが、読解する上で漢字の学習は必須です。でも、なぜ必須なのかをあまり説明されていないと思います。
評論文というものは、当たり前ですが漢字が散りばめられています。国立国語研究所の調査によれば、国民によく読まれている雑誌63誌の漢字含有率は平均26.52%で、評論だけに絞ると、31.99%に跳ね上がります。そのため、漢字が読めないようでは、そして漢字に込められている概念(意味内容)が分からないようではすぐに文意を失うでしょう。漢字を学習しないで評論文を読解するのは、それこそ靴も履かずに外を歩くようなもの。必ず怪我をします。
例えば、「忌むべき行為だ」という文があったとします。「忌む」に仮名が振られていれば、なんとなく意味が掴めるかもしれません。しかし、振り仮名もなく、読むことさえできなければどういう意味かも分からず、結果として筆者が何について否定的なのかも掴めないわけですから、筆者の主張を読み落とす可能性もあるのです。
以前、専修大学の入試問題で、「たいしょう」と読む熟語の穴埋め問題がありました。選択肢には、「対象」「対照」「対称」という3つの言葉が並んでいました。こういった同音異義語は、漢字学習を通してその違いを理解するものですので、漢字の勉強を疎かにしていた受験生は容易に正解することはできなかったでしょう。
また、次の章で「評論文重要語」について述べますが、これらは高度な概念を有する言葉で、そのほとんどが漢熟語です。従って、漢字が分からなければ、この評論文重要語の暗記・理解も覚束なくなるわけです。
以前の記事で、大学入試に絡めて漢字の学習法を紹介していますので、興味のある方はそちらをご覧ください。おすすめの参考書についても掲載しています。
漢字学習法
評論文重要語
以前、青山学院大学の入試問題で、評論文重要語を補わせる空所補充の問題が出ました。選択肢には5つの言葉が並び、最終的に「不変」と「普遍」で迷わせるという問題でした。この両者はいずれも「ふへん」と読みますが、意味は明確に異なります。「不変」は文字通り、変化のないことを意味しますが、「普遍」は2つの漢字とも「あまねく」と訓読みし、「全ての物事にあまねく(=広く)共通すること」を意味する入試頻出の重要語です。評論文重要語の学習をあまりしなかった生徒は、かなり手こずったでしょうね。
もう一例。「実存」という言葉も、現代文重要語の一つです。これは、「神の支配(加護・恩恵)から解き放たれた(現実)存在」といった深遠な意味がある哲学用語でもあります。近代人は、科学的法則を次々と解明し、産業革命も成し遂げました。結果として、今までは神の為せる業とされてきた現象が、実は自然法則に則って行われることを解き明かします。人間は神に代わって、あらゆるものを支配する存在となり、神の権威が失墜するのです。しかし、今まで神の権威と啓示のもとに生きてきた人間は、たちどころに生きていく上での指針を失い、どう生きるべきかに煩悶するのです。その近代人の「個」としての存在を「実存」と言うわけですが、この概念が頭に入っていなければ、そこで文意を掴み損ねる可能性もあるのです。

また、例えば、「パラドクス(パラドックス)」というギリシャ語由来の言葉がありますが、こちらも入試頻出の重要語です。「一見矛盾しているように見えて、実際は真実を言い当てている」という意味があります。「急がば回れ」などがまさにそうですが、「急いでいる時ほど近道をしないで、いつも使い慣れている道を行った方が結局は早く着く」という意味で、評論文ではこのような事象をパラドックスという言葉で表現するのです。「アイロニー」や「シニカル」、「イデオロギー」など評論文重要語は漢熟語だけではなく、外来語のものも数多く含まれており、これらは漢字から意味を推測できないので、もはや知らなければお手上げとなります。
この章で、私は「普遍」「実存」「パラドックス」という評論文重要語を立て続けに紹介しましたが、考えてみてください。これらが一度期に評論文に出現した場合、そしていずれも意味が判然としなかった場合、その日の評論文の正答率は散々なものになるでしょうね。
問題になるならないに関わらず、評論文には重要語が数多く使われていますので、これらをインプットしないまま読解に臨むのは、まるでライトもなく洞窟をさまようようなものでしょう。この機会に、ぜひ評論文重要語の習得に努めてください。以下、私が必ず生徒に勧める良書です。次の章で述べる「評論文頻出テーマ」についての知識も得られます。ぜひ参考になさってください。
評論文頻出テーマ
評論文には、頻出テーマというものがあります。「背景知識」と呼ばれることもあります。毎回評論文を読解するたびに、違う内容が論じられているように見えますが、実際は「頻出テーマ」というものが存在します。この頻出テーマを頭に入れておけば、「ああ、今回はこの手の話か」というように、これから論じられる内容の手がかりが掴めるようになり、評論文が格段に読みやすくなるのです。
以前、國學院大学の問題に、明治大学文学部教授齋藤孝さんの「腰・ハラ文化」という評論文が出題されていました。現代文の勉強をしっかりしている生徒なら、「腰・ハラ文化」という出典名を見ただけで、今回の評論文が「身体論」に基づくものだと分かったでしょう。「身体論」とは、「近代以降、思考・精神の従属物として軽視されて来た「身体」の重要性にも目を向けるべきだ」という趣旨の論考となりますが、実際にこの評論文もその手の内容でした。

テーマが分かれば、その評論文の概要を掴んだのも同じです。言うなれば、月明かりに照らされて、夜道を歩くも同然です。「身体論」を知っていた受験生は、人知れず合格を確信したかもしれません。少なくとも、その後の科目の追い風になったのは間違いないでしょう。
頻出テーマには、例えば、センター試験に出題された「自己・他者論」、専修大学で出題された「作家論・テクスト論」、早稲田大学で出題された「ナショナリズム論」など数多くありますが、これらの事前習得に努め、自らの読解を確実、かつスピーディなものに高めてください。
現代文のノートはどのように整理すればよいか?
現代文は、「読んだらそれで終わり、解いたらそれで終わり」というのが、最も危険な勉強法です。このやり方から得られるものは、勉強したという単なる満足感がほとんどで、1か月もすれば、本来そこで得られるはずだった語彙やテーマの知識は脳内から消失します。
私が推奨しているのは、大学ノートを1冊用意して(タブレットでも構いません)、現代文の問題を読解するたびに、その文章から得られた、覚えておきたい未知の漢字、未知の現代文重要語、未知の評論文テーマを書き留めるというものです。コツとしては、あまり知識を拾いすぎないこと。欲張って多くを書き留めようとすると、いずれ、必ず面倒になって挫折します。そのため、語彙は覚えておきたいものを厳選して、テーマは図や表、イラストなどを用いて整理し、1〜2ページほどにまとめると良いでしょう。これを、私は「思想ノート」と読んでいます。生徒にまとめさせては、学期ごとに必ず提出させていました。半年もすれば、現代文に対する恐怖心がなくなります。なぜなら、知っている内容が論じられている評論文を目にすることが多くなるからです。

この「思想ノート」のメリットは、評論文の読解力向上に留まりません。近年、首都圏の大学は合格するのが容易ではありませんが、私のHPではかなり強調している通り、推薦入試を有効活用することも合格するための重要な選択肢の一つとなります。その時に、この「思想ノート」は小論文入試のためのネタ帳にもなるのです。高度な評論文の思想を、自らの小論文のネタに援用できるわけですので、高評価を得られること請け合いです。

まとめ
現代文の勉強法
☆漢字の学習を疎かにしていると、現代文(評論文)に散りばめられている漢字の読み・概念が分からず、その評論文の要旨を掴み損ねる可能性が高い。
☆漢字の学習がきちんと行われていないと、漢字で構成されていて、なおかつ高度な概念(意味内容)を有する評論文重要語の円滑な暗記・理解の妨げとなる。
☆評論文重要語には外来語のものも数多く含まれているため、事前に意味を把握しておくことが不可欠である。
☆評論文は毎回違う内容が論じられているように見えるが、実際は頻出テーマというものがあるので、その頻出テーマを把握し、読解のみちしるべとすることこそが効率的な読み方である。
現代文のノート作り
☆「読んだら終わり、解いたら終わり」という学習ではなく、評論文を読解したら、必ず未知の語彙・テーマを「思想ノート」という形で整理しておく。
(小論文のネタ帳にもなる。)
これは、実際に私が生徒に勧めてきた勉強法であり、多くの生徒が効果を実感した方法論ですので、自信を持って推奨します。国語が苦手な方は騙されたと思って、一度試してみてください。
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