記事の概要
大学入学共通テストまで、間もなくあと200日となります。
昨年度の一般入試(=現「一般選抜」)は、兼ねてからの予想を上回り、極めて厳しいものになりました。
今年度も、以下の理由で引き続き難化することが予想されています。
①共通テスト導入による一般入試の難化
②入学者定員厳格化による一般入試の競争率上昇
③安全志向による各大学レベル帯の志願者数増加
④推薦入試拡大による一般入試合格者定員枠の減少
⑤指定校推薦の積極利用による一般入試合格者の絞り込み
この記事では、昨年度まで2年連続して高校3年生の担任を務めてきた経験を活かして、今年度の一般入試が難化する理由を具体的に解説することにより、推薦入試を効果的に活用する戦略が極めて有効であることをお伝えしたいと思います。
長年の間、受験指導・進路指導に携わってきた経験から、高校生やその保護者の方、新任の先生向けに、ここだけの、取っておきの、実践的な入試攻略法をご紹介しています。
最新の情報が入り次第、記事の内容を更新したいと思いますので、定期的にサイトをご訪問ください。
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今年度の一般入試が難化する理由(=推薦入試の有効性)
ここ数年、「今年度の入試は難化する」と言われ続けています。
エアコンの購買意欲を高めるために、毎年春になると家電業界は「今年は猛暑」という言葉を連呼しますが、「今年度の入試は難化する」というのは真実です。
では、なぜ難化するのでしょうか?
それにはいくつかの理由があります。
①大学入学共通テストの開始
いよいよ今年度より、大学入学共通テスト(以下、「共通テスト」)が開始されます。
平成29,30年に「大学入学共通テスト 試行調査」と呼ばれるプレテストが行われました。
そのプレテストを指標にして、現高校3年生は1年生の時から共通テストの対策を行ってきたことと思います。
しかし、この2回の試行調査でも問題の形式は定まっておらず、教育の現場でも傾向と対策が絞れていないのが現状です。
従来の大学入試センター試験では問題形式の異動はほとんどなく、傾向と対策がはっきりしていました。
そのため、受験勉強がしやすかったですし、結果も出しやすかったのですが、今年度はそれが出来ません。
学力の高い受験生でも、万が一不慣れな問題形式が出題された場合、致命的な事態が起きることが予想されます。
結果、共通テストを利用しない私立大学を受験生が多めに併願することで競争率が上昇し、今年度の入試は難化する可能性があるのです。
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②入学者定員の厳格化
かなり周知されていると思いますが、首都圏の大学には入学者定員を厳格に守るよう文部科学省から通達が来ています。
これは、地方の大学に学生を分散させるための施策です。
それぞれの大学には収容定員というものがあります。
以前は、大学側の裁量で合格させようと思えばいくらでも合格させることができましたが、現在はご承知の通り、大学入学者定員の厳格化で収容定員を守らなければなりません。
守らなければ国からの補助金が削られますので、大学側も必死です。
具体的に言えば、この収容定員に対して、どれだけ生徒が在籍しているか、その「充足率」が1.1を超過しないように大学は四苦八苦しているのです。
少しややこしい話になりますが、その収容定員は学部や学科にも個別に設定されていて、最終的に大学全体で充足率1.1を超過しないように調節しているわけです。
そのため、各大学では意図的に合格者を削減し、結果として競争率が高まるのです。
③安全志向が高まる
共通テストにおける記述式の導入や英語の外部試験利用が来年度以降に見送られることになりましたが、だからこそ是が非でも今年度中に合格しようという意識が現役生にも浪人生にも働きます。
また同時に、入学者定員の厳格化によって、一般入試の競争率が上昇するという意識が受験生に働きます。
結果として、受験生の安全志向は高まり、例年より多くの大学を実力相応校、滑り止め校として併願することになります。
具体的に言えば、難関大学は合格しづらい、または絶対に浪人したくないと考える多くの受験生が、1〜3ランク下の大学まで幅広く併願校として設定することになります(通常は1〜2ランク下です)。
そのため、ドミノ倒しのように各大学レベル帯の志願者が増加するため、その分競争率が上がることが予想されているのです。
④一般入試定員数の減少
文科省の「平成30年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によれば、大学入試の全合格者に占める推薦入試合格者の割合は年々増加しています。
大学入試の全合格者に占めるAO入試(=現「総合型選抜」)による合格者の割合 |
平成28年度・・・8.9%
平成30年度・・・9.7%(0.8%↑) |
大学入試の全合格者に占める公募(制)推薦入試(=現「推薦型選抜」)による合格者の割合 |
平成28年度・・・34.8%
平成30年度・・・35.5%(0.7%↑) |
この両者を合わせれば、約半数の大学生が推薦入試を経て大学合格を勝ち取っているのです。
つまり、推薦入試は一般入試に匹敵するほどの定員枠を有していて、この枠は年々増加しているわけです。
裏を返せば、一般入試の合格枠は年々減少傾向にあるので、必然的に難易度が高くなってきているのです。
そのため、推薦入試を効果的に利用することこそが合格の決め手となるのです。
⑤指定校推薦の増加
あまり知られていませんが、指定校推薦もまた一般入試を難しくしている要因の一つです。
なぜ指定校推薦が一般入試を難化させるのでしょうか?
第1に、先ほども申し上げたような安全志向の受験生が一般入試を敬遠し、例年になく指定校推薦を利用するからです。
指定校推薦による入学者が少なければ、その分各大学は一般入試で募集定員以上の合格者を出すことによって入学者を最終調整します。
しかし、指定校推薦での入学者が増えれば、一般入試の合格者数は募集定員枠内に収まるため、結果的に一般入試は狭き門になるということです。
例えば、〇〇大学の経済学部では最終的に30人を入学させたいと考えているとします。
募集定員の内訳は、指定校推薦が10人、一般入試が20人としましょう。
例年、指定校推薦では5人ほどが入学し、一般入試の募集定員は20人なので、大学としては一般入試で25人を合格させることが出来るのです。
しかし、指定校推薦の入学者が上限いっぱいの10人になれば、大学としては一般入試で募集定員と増減なしの20人しか合格を出せないのです。
第2に、指定校推薦やその他推薦による入学者を多めに出すことによって、敢えて一般入試の合格者を減らして倍率を上げている大学が存在するからです。
そうすると何が起こるのかと言えば、その大学の入学試験における倍率が上がるわけですので、各予備校の大学ランク・偏差値が上昇します。
結果として、その大学の格付けが高まってブランド力が強化され、翌年度には優秀な受験生が殺到するという仕組みです。
大学側はそんな意図があることは認めないでしょうが、高校の進路担当は誰しも分かっていることです。
推薦入試有効活用のススメ
今年度の一般入試が難化する理由と、だからこそ推薦入試を利用する戦略が有効であることがご理解いただけたと思います。
AO入試(=現「総合型選抜」)と推薦入試(=現「推薦型選抜」)を利用すれば、一般入試(=現「一般選抜」)と合わせて、合計3回の志望校合格のチャンスがあるわけです。
当サイトでは、大学入試お役立ち情報を発信しておりますので、ぜひこの機会に推薦入試に関する知識を深めてください。
次回は「大学推薦入試の種類~総合型選抜(AO入試)・推薦型選抜(公募推薦)」について具体的に解説したいと思います。
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